がんに備える民間保険の代表格は「医療保険」と「がん保険」の2つだが、どちらの保険に入っても気をつける必要があるのが「免責期間」だ。ファイナンシャルプランナー(FP)の長尾義弘氏が言う。
「保険契約が成立してから90日以内は、保険会社の免責期間とされている保険商品がほとんどです。がんを疑い、保険金目当てに慌てて保険加入するなどのケースを予防するための措置ですが、不幸にもその期間内にがんが見つかるケースもある。
私の顧客で、契約1か月後の健康診断をきっかけに精密検査を経てがんが見つかった方がいましたが、給付金をもらうことができませんでした」
多くの人が選びやすいのが、医療保険に「がん特約」を付加するケースだが、こちらにも落とし穴がある。注意が必要なのは「入院がベース」という点だ。
自身も乳がんを患った経験をもつFPの黒田尚子氏が自身の「後悔」を踏まえて解説する。
「医療保険の場合は入院や手術に対して給付金が支払われる性質上、『どのくらい入院したか』をベースにお金がもらえる仕組みが基本になっています。
しかし、がんの種類やステージによっては通院のみで抗がん剤治療というパターンもあり、入院ベースの医療保険ではがんになっても十分なお金がもらえません。私もがんと診断されてから、『がん保険に入っていれば……』『通院特約を付加していれば……』と何度も後悔しました」
がん保険では、がん診断給付金として100万円程度のまとまったお金がもらえ、その使い道も自由なので、当座の治療費やそれ以外の支出に充てることができる。
とはいえ、がんに特化したがん保険にも気をつけるべき点はある。まずは「“がん”なのに保険がおりない」ケースだ。
がんには、がん細胞が臓器の表面を覆う上皮内にとどまる「上皮内新生物」と、上皮の奥に浸潤しほかの場所に転移する恐れがある「悪性新生物」がある。古いタイプの商品の場合、上皮内がんについては保障の対象外としているものもある。
「上皮内新生物は死亡に繋がることがほとんどないということで、保険の適用外、または10~50%など保障が限定的なこともあるので、契約の際に確認が必要です」(黒田氏)