生殖医療の発展により、結婚をしなくても、パートナーが異性でなくても、わが子をこの腕に抱くことは不可能ではなくなっている。卵子や精子の提供を受け、子供をもうけるケースが増えているのだ。
そして、国内では“生殖ビジネス”がひそかに乱立しつつある。金沢大学大学院医薬保健学総合研究科助教の日比野由利さんは「すでにもう何年も前から、“自分の卵子を売る”というビジネスは存在する」と話す。
仲介するのは、卵子提供をあっせんする業者だ。国内では、強制力はないものの、卵子提供は日本産科婦人科学会によって基本的に禁止されている。そのため、卵子の提供者はほとんどの場合ハワイやロサンゼルス、台湾、東南アジアなどに数日~数週間ほど渡航し、現地の専門の医療機関で卵子を採取することになる。
現在、卵子はまるで“高額商品”だ。業者を通す場合は数十万円の報酬に加え、海外への渡航費や宿泊費も卵子の購入者が支払う。なかには、多額の報酬をもらえてタダで“卵子提供旅行”に行けることを売りにしている営利目的の業者も見られる。
「いまは、性風俗の対価がデフレ化しているといわれています。お金に困った女性が性風俗の代わりに手っ取り早く収入を得る手立てとして、卵子提供を選ぶことができてしまう。性を売ることに抵抗感がなくなってパパ活が流行しているのと同様に、卵子を売ることにも抵抗がなくなっているのかもしれません。
卵子の提供者は、若く健康であることが求められる。女子大学生が学費を稼ぐため、長期休暇を利用して海外で卵子提供をするという話も耳にします」(日比野さん)