新型コロナウイルスの出現から2年。低迷が続いた日本経済は復活するのか。第一線の論客である森永卓郎(経済アナリスト)、永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)、馬渕磨理子、(経済アナリスト)の3氏による座談会を開催。2022年の未来予想図を語り合った。【全3回の第3回。第2回はこちら】
永濱:政治的な要因は軽視できないとしても、この先、コロナが抑制できるのであれば、日本企業にも復活の機運は高まっていくでしょう。特にこれまで非常に厳しかった移動や接触を伴うビジネスが復活してくると見ています。観光業界や飲食店などのリバウンドは期待できる。
また、2021年12月の日銀短観を見ると、世界的な半導体不足や原材料高の恩恵を受けている鉄鋼や石油・石炭などの素材産業に加え、電機、機械などの製造業にも期待が持てます。半導体関連の企業などは冬のボーナスも相当増えたそうです。
馬渕:日本を代表するトヨタ自動車も、ここにきてEV(電気自動車)に力を入れ、円安による利益の上乗せも期待できる。トヨタがよくなれば、製造業全体の雰囲気をよくする効果も期待できるでしょう。
個別テーマでは、フェイスブックがメタに改名したように「メタバース(仮想空間)」が注目されると見ています。大手ならソニーグループなど。同じく、デジタル上でモノを所有する「NFT(※注)」という仕組みではメルカリなども注目です。
【※注/「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略称。デジタルデータを「唯一のもの」として取引できる資産の一種】
何より私たちはコロナとの向き合い方をこの2年で学んできたので、感染対策を講じながら経済を回していく「ウィズ・コロナ」の発想で、非製造業にも期待が持てます。
森永:コロナ禍では前向きな変化もありました。ライフスタイルの大転換です。これまでなら東京や大阪などの大都市まで通勤していたのに、出社しなくてもリモートで仕事ができることがわかった。
そこでますます役割が高まりそうなのが、あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」です。それからAI(人工知能)やロボットの進化もあって、おそらくこの先、定型的な仕事はそれらに取って代わられ、残るのは人間でないとできないクリエイティブな仕事。そうなるとわざわざ都心に集まる必要性もなくなる。
馬渕:デジタル田園都市国家構想もあるから、そういう流れもあるでしょうね。
森永:地震などの災害リスクもあって、東京への一極集中を分散しておいた方が安全。コロナ後の新たなライフスタイルを考えると、“非東京”の地方企業は注目しておいた方がいいと思いますね。