性差にとらわれず、異なる価値観を認める多様性の意識が社会に広まりつつあるが、それでも「らしさ」の呪縛に苦しむ人たちは絶えない。女性に対して「女らしさ」を求める風潮は徐々にタブー視されつつあるが、一方で男性側も「男らしさ」を強いられてくる苦しむケースがある。電通総研の調査によると、全世代(18~70歳)の男性の約半数が「最近は男性のほうが女性よりも生きづらくなってきている」と感じているという。男性たちはどんなことに苦しんでいるのか。生きづらさを実感している男性たちの声を集めた。
「低年収なら男として見られない」
「女性が求める『普通の男』『年収』みたいなニュースを見るたびに、ため息が出ます。見なきゃいいんですけど、やっぱり落ち込みますよね」
そう嘆くのは、メーカーに勤務する30代男性・Aさんだ。交際でも婚活でも男性は年収が最重視される重圧を感じている。
「婚活を意識すると、やっぱり女性側は自分より年収が高い男性を求めていて、『男の価値=年収』という価値観は根強いことを突きつけられます。低年収なら男として見られない。いくら共働きが浸透した社会であっても、出産や育児、また病気など万が一のことを考えると、高収入の男性に惹かれる女性が多いのは理解できます。
私自身は平均年収にやっと届くくらい。結婚を考えると、これまで以上に『養わなくてはならない』『働き続けなくてはならない』というプレッシャーを強く感じるようになり、逃げ出したくなっています」(Aさん)
Aさんはかつて、こうした「男らしさ」を求められる重圧の苦しみを、学生時代の女友達に口にしたことがあった。しかし、返って来たのは皮肉にも「男らしさ」を求める言葉だった。
「『男なら黙って働け。ウジウジするな』みたいなことを言われました。『女だから黙って料理作れ、と言ったら怒るくせに』、と反論してみたのですが、『じゃあ働かなかったらいいんじゃないの? 誰も相手にしないと思うけど』という辛辣な言葉が(笑)。『女らしさ』はダメだけど、古いイメージの『男らしさ』は求めても問題ないみたいな風潮は、モヤモヤします」(Aさん)