スーパーの鮮魚コーナーや野菜コーナーで目にする「国産」の表示。無意識に「安心」「おいしい」と思ってしまう人もいるだろうが、その「国産」は本物だろうか。最近では「熊本県産あさり」の産地偽装問題が大きく取り沙汰されたばかり。うなぎや高級魚、牛肉など、食品の産地偽装は頻発しているのだ。
青果の分野でも、高品質な日本の農作物は注目されやすい。兵庫県・淡路島の名産品である淡路島たまねぎは、「やわらかい」「甘い」「辛みが少ない」と高い評価を得ている。4~5月は、待ちに待った新たまねぎの収穫時期だ。同島の最大産地でもある南あわじ市で、親子代々、たまねぎの栽培を手がける川村喜一さん(仮名・66才)が話す。
「淡路島のたまねぎは明治時代に、この南あわじ市の地で試作したのが始まりと聞いています。戦後から広まり始め、1964(昭和39)年には日本一のたまねぎの産地となった。そして全国に知られるブランド品となりました」
40年以上、たまねぎ作りを続けてきた川村さんだが、2ヘクタールもの広大な畑を眺めながら、表情を曇らせる。
「淡路島でもたまねぎの産地偽装が何度も起こっています。この南あわじ市からも見つかっている。なかでも衝撃だったのが、2012年にあった大規模詐欺。南あわじ市の農産物加工業者が、中国産たまねぎを淡路島産と偽って、約560tも販売していたんです」(川村さん・以下同)
業者は、自身の会社名義で「淡路島産」と記したニセの産地証明書を発行し、取引業者を信用させていた。しかし、完全に取引先をだませたのは、さらに巧妙すぎるやり口からだ。
「詐欺業者は、淡路島たまねぎの栽培法を中国に持ち込んだのです。そのため、プロでも見分けがつかないほど淡路島たまねぎと品質が近かった。それを淡路島に運び込んで、“淡路島産”と書かれた箱に詰め替えたら、もう見抜くのは難しい。さらに、取引先が商談の視察にやってくると、無関係の畑に連れていって『この畑で育てているたまねぎだ』などと説明していたそうです」