中国で老壇酸菜湯を食べたことがあるだろうか。高菜漬に似ているが、もう少し酸っぱくて塩辛くて旨味が強い漬物である「老壇酸菜」をベースにスープを作り、そこに淡泊だが歯ごたえのあるナマズの切り身、肉厚のきくらげ、栄養価の高い大豆もやしなどを入れる。いろいろな作り方があるようだが、個人的にはこの組み合わせが一番うまいと思う。
少し癖のある老壇酸菜だが、中国では全国的に人気が高く、大手カップ麺メーカーはどこも、これをレトルトにして入れたシリーズを販売していて、特に康師傅控股(香港・00322)の老壇酸菜牛肉麺は人気商品である。
この老壇酸菜が今中国で大問題となっている。
中国国営テレビ、財経チャンネルは毎年3月15日、「世界消費記念デー」にちなみ、悪質な業者を炙り出し、その手口を暴露する2時間の特別番組を放送した。
覆面取材で悪を正すといった趣旨の番組で今年で32年目となる歴史のある番組だが、今年も消費者にとっては見逃せない話13本が紹介された。中でも、この老壇酸菜に関する“土坑”酸菜が大きな関心を集めている。
湘南省插旗菜業有限公司は老壇酸菜を製造販売する会社だが、外国向けには決められた製造基準に従って自社で作っているが、中国国内向け、特にカップ麺メーカー向けなどの低価格製品については、近隣の農家が作った原材料を仕入れ、それを加工して販売している。今回暴露されたのはこうした低価格の国内向け製品で、明らかに国家が定める製造基準に適さない方法で製品が作られている点だ。
とにかく作り方がひどすぎる。畑で大規模に高菜を栽培。収穫期にはその畑の一部に深さ1メートルぐらいの大きなプール状の穴を掘り、下にビニールシートを敷き、そこに収穫したばかりの高菜をそのまま放り込み、上から塩をぶちまけ、ビニールシートをかけて、その上に土をかぶせて放置する。
3か月ほど経ち発酵が一通り終わったところで取り出し、出荷するのだが、その際、農家の作業者は裸足であったり、サンダル履きのままであったり、漬物を踏みつけながら収穫する。ある作業者は煙草を吸いながら収穫し、吸い殻をそのまま漬物の上に投げ捨てていた。映像で捉えた瞬間ですらこんな状態だ。映像にない大部分の時間、どのように扱われているのかおおよそ想像がつくだけに、非常に気持ちが悪いだろう。
この映像が公開された直後、康師傅は声明で「問題となった酸菜製品は全て使用中止した」として「消費者の信頼を裏切ったことについて深く謝罪する」と発表している。