“関西料理界のドン”神田川俊郎さん(享年81)が新型コロナで急逝して1年が経とうとしているが、「遺産相続をめぐってトラブルになっているのでは」という噂が流れている。というのも、億単位の不動産の相続がまだ済んでいないというのだ。神田川さんは3度の結婚と離婚を繰り返していて、複雑な家族関係が背後にかかわっているのではないか、と言われているが、はたしてその真相は──。【前後編の後編。前編から読む】
関西イチの繁華街にある数億円の土地をめぐる遺産相続問題。3人のきょうだい、そして愛弟子たちの間でトラブルになっているのだろうか。神田川さんの長男であるA氏の自宅を訪ねると、家族関係が複雑なことは認めた上で、「トラブルではないんです」と打ち明ける。
「驚くかもしれませんが、神田川本店は会社で経営しているのではなく、父が個人事業主として店を経営していたんです。つまり、お店の光熱費や固定費、従業員の給料もすべて父の個人口座から引き出されていました。しかし、父が新型コロナの影響で突然亡くなって、銀行口座が凍結されてしまったんです。運営資金の一切が使えなくなっていました。
そこでぼくが自己資金を投入したり、とにかくまずは店を立て直すことが先決だということで、相続の話し合いが後回しになっていた部分はありました」(A氏・以下同)
大阪市内に3店舗、少なくない人数の従業員を抱えているのにもかかわらず、個人事業主だったとは意外だ。さらに、店はコロナ禍のあおりを受け、売り上げも大幅に減少。経営は芳しくなかったようだ。むしろ、A氏や次女が店を継ぐことは“火中の栗を拾う”ような選択で、従業員たちから懇願されたという。
「皆さんは莫大な遺産があると思っているのかもしれませんが、そんなにありません。むしろ借金もかなりありますから。そもそも、ぼくは店を継ぐつもりはなかったんです。生前、父からはやってくれと言われていましたが、ずっと断っていました。財産放棄も考えました。でも、従業員のみんなに後押しされて……ぼくと姉にやってほしいという思いをぶつけてくれたんで、みんなのためにも継ぐことに決めたんです」