給料、人間関係、家庭の都合……。会社を辞める理由は人それぞれだが、高給で福利厚生にも恵まれた「ホワイト」なイメージがある大企業を辞める人もいる。傍から見れば「好待遇を捨ててもったいない」と思う人もいるかもしれないが、退職するからにはそれ相応の理由がある。なぜ彼ら/彼女たちは決断に至ったのか、実際に大企業を退職した人たちに、話を聞いた。
入社数年で年収1000万円を超えるのに…
大手広告代理店を3年で退職したのは、現在マーケティング会社に勤務する30代男性・Aさんだ。当時、待遇面や勤務スタイルには不満はなかった。
「今でこそビジネスカジュアルが当たり前になりましたが、僕のいた会社は当時からスーツにとらわれず、Tシャツでも勤務可能なくらい服装も自由でした。勤務スタイルも、仕事さえしっかりこなしていれば出社や退勤時間に縛られることなく、仕事も楽しかった。入社数年で年収は1000万円を超えるので、待遇面も申し分なかったです」(Aさん)
恵まれた待遇にもかかわらず、Aさんが退職を決断したのは、大企業ならでは“層の厚さ”に気づいたからだった。
「自分がこの会社にいても、力をつける道のりが見えませんでした。社内にいるつまらないオッサンを見て、『年齢を重ねた時に、俺はああなるのか』と……。しかも、当時の社長の年収が5000万円くらいと聞き、入社数年で1000万円を超えるのに、その後、超偉くなってもそれなのかと。『割に合わない』と本気で思ってしまいました」(Aさん)
大企業を辞めることに不安がまったくなかったわけではないが、“出戻り社員”の再雇用制度が背中を押すことになった。
「退職後、もし戻りたくなったら会社の制度で“出戻り”が許されていたこともあり、退職することに大きな不安はありませんでした。今の仕事が充実しているので、辞めた後悔はありません。前職の元上司とは今でも交流があり、意見交換はもちろん仕事のアドバイスをもらっています」(Aさん)