人生100年時代を迎え、長く働きたい人の選択肢が増えてきた。昨年4月施行の改正高年齢者雇用安定法では、働く人の70歳までの就業確保措置の努力義務が企業に対して課さられるようになった。企業側が「長く働ける環境」を用意するよう求められているのだ。しかし、いつまで働くか、どう働くかといった点の定めが曖昧になり、線引きを自分で決めなくてはならない時代に突入したということでもある。働き方が多様になる「定年消滅時代」には、どのように働くのが正解なのか、専門家に聞いた。
まず、いつまで働くことを想定すればよいのか。シニア専門の再就職・転職サイト「シニアジョブ」代表取締役社長の中島康恵氏が語る。
「仕事の辞め時を自分で決める時代になりました。60代前半ぐらいの方に話を聞くと『体が動くうちは働きたい』という声が少なくありませんが、ひとまず70歳まで働くことを1つの目標に据えるのが、年金制度や健康寿命を踏まえると現実的でしょう。
ただし、60歳以上の『雇用制度』は法律上の選択肢も広く、企業によって中身は様々。60歳定年で以降は1年毎の契約更新の企業も多い。つまり、70歳まで働き続けられる確証がないのです。現役世代のうちに70歳定年の企業に転職を考える方も増えましたが、本業と副業の勤務日数を合算して基準を満たせば雇用保険に加入できる『雇用保険マルチジョブホルダー制度』が今年の1月からスタートするなど、国もシニアの副業を推進しており挑む方が増えています」
歳を重ねると親の介護に時間を取られたり、現役時代よりも就業日数が減るといったケースが考えられ、働き方の再考を迫られる人もいるだろう。そこで隙間時間で稼げるシニア向けの副業が注目されている。
「65歳からが働き盛り」――そう掲げるのは、シニア専門の人材派遣会社「高齢社」だ。60歳以上をターゲットとし、登録者の平均年齢は71.2歳。独自の「ワークシェアリング」システムにより働き方を柔軟に選べるのだという。同社の村関不三夫社長が解説する。
「1つの仕事を2~3人で回す『ワークシェアリング』のかたちにすることで、毎日フルタイムで働かなくても、無理なく仕事を続けられます。シニアの方には朝や土日のシフトだけお任せしたり、その人のライフスタイルに合わせた働き方が可能になります。
特別なスキルを必要としない仕事もあり、例えば企業の営業車に同乗する『横乗り業務』といった案件などもあります。メーカーのサービスマンのメンテナンスなどに同行して、営業車を停車している間、助手席に座ってもらうといった仕事は運転免許さえあればできます。他には、他の営業所に乗り捨てられたレンタカーを元の営業所に回送する仕事やレンタカーの清掃といった業務もあります」