大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

ウクライナ侵攻で露呈 常任理事国が戦争を始めたら止められない国連の無力

常任理事国のロシアが拒否権を行使すれば、国連安保理も為す術がない(イラスト/井川泰年)

常任理事国のロシアが拒否権を行使すれば、国連安保理も為す術がない(イラスト/井川泰年)

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は未だ終息の兆しが見えず、国連(国際連合)のグテーレス事務総長がプーチン大統領と会談しても、停戦提案すらできなかった。今、なぜ国連は機能不全を起こしているのか、経営コンサルタントの大前研一氏が解説する。

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 ロシアのウクライナ侵攻で、国連(国際連合)の機能不全が改めて浮き彫りになった。安全保障理事会で、ロシアの軍事侵攻を非難して即時撤退を求める決議案が、常任理事国・ロシアの拒否権行使によって否決され、国連は為す術がなくなってしまったのである。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は3月、日本の国会でのオンライン演説で「国際機関が機能しなかった。国連安保理も機能しなかった」と指摘して国連改革の必要性を訴え、日本のリーダーシップに期待を寄せた。さらに4月の国連安保理におけるオンライン演説では「我々は安保理での拒否権を、死をもたらす権利に変えてしまう国家を相手にしている」とし、侵略戦争を強行するロシアを国連から排除するよう求めた。

 しかし、国連のグテーレス事務総長は「人道的停戦の実現は現時点では不可能」との見方を示して手をこまねいている。常任理事国がロシアのように戦争を始めたり、中国のように人権侵害を続けたりしても、国連が全く無力なのだ。

 こうした事態を受けて、常任理事国が拒否権を行使した場合は総会での説明責任を負うとする決議案が採択されたが、それに効果があるのか、甚だ疑問である。

 4月26日にはグテーレス事務総長がプーチン大統領と会談したものの、停戦提案すらできなかった。

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