愛し合って結婚したのに、「同じ空気を吸うのも嫌」と“家庭内別居”を始める夫婦もいる。「特にコロナ禍を境に増えました」とは、離婚問題に詳しい弁護士の齋藤健博さん。
「夫婦関係は破綻したものの、家や子供、見栄、金銭的な理由などから離婚はしたくない夫婦が家庭内別居を甘んじて受け入れることが多いように思います」(齋藤さん)
離婚をすれば家賃や生活費などの負担が重くなる。となると、ハードルの高い離婚より、手っ取り早く顔を見なくて済む家庭内別居を選ぶのもうなずける。顔を合わせなければけんかも避けられる。
とはいえ、憎い相手が家にいるストレスなど、デメリットもある。どうしたら家庭内別居を負担なく続けられるか。世の女性たちに聞いた具体例と専門家のアドバイスを見ていきたい。
【実例1】テープを貼って立ち入り禁止に(45才・パート女性)
結婚前から一流大学出身であることを鼻にかけ、事あるごとに短大出身の私をばかにしてきた夫(48才)。まぁ、そのおかげで給料のいい会社に勤めてもらって、その恩恵にあずかれていたので、多少の暴言はがまんしてきたのですが……。それに、出張やゴルフでほとんど家にいなかったですし。
ところがコロナ禍でわが家の状況が一変。夫がリモートワークになり、昼間からリビングを独占。大声でリモート会議をし、私たちが少しでも音を立てると激高。娘(14才)もリビングでオンライン授業を受けていたので、父親の怒声がクラスメートに丸聞こえに……。娘は泣く泣く、廊下で授業を受けることにしたんです。
「あなたが私たちを迷惑がったように、あなたのせいで娘も授業に集中できないの」と冷静に抗議をしたところ、「おれの部屋がないのが悪い」と逆ギレ。そこで、玄関横にある娘の部屋を夫の部屋にし、夫婦の寝室を娘の部屋に、私はリビングのソファで寝ることにしました。
これには夫も大満足し、「お前ら、おれの部屋には絶対に入るなよ」と、こもりっきりに。このとき私は気づいたんです。これは、家庭内を住み分けるチャンスだと。早速リビングの床に、赤いテープを貼りました。そして、
「あなたの個室を作った代わりに、いまはリビングが私の寝室なの。だから、このテープから先には入らないで。あなたの部屋には私たちも絶対に入らないから。お互いさまよね」と提案。
「おれの部屋に入るな」と自分から言った手前、夫はしぶしぶ受け入れたんです。その後も、夫がリビングに入ろうとすると、「この前、ルールを決めたよね。私たちもあなたの部屋には入っていないでしょ」と、穏やかな口調で拒否。おかげで快適な生活を送れるようになりました。
【アドバイス】居住範囲を分けるのは円満な家庭内別居の秘訣
「一般的に男性の方が金銭的な負担が大きく、家への支配欲が強いので、家庭内別居や離婚に抵抗する人は多い。そのため、話し合いの結果をルールとするご家庭も。このように、夫の言動を逆手に取るのはいいと思います」(齋藤さん)