7月10日に投開票となる参議院選挙。そこで問われていることは、何なのか。NHKの世論調査では、今回の参院選においてもっとも重視する政策課題に「経済対策」を挙げた人が42%と最多だった。
今年4月の生鮮食品を除く消費者物価上昇率は、前年同月比で2.1%となっており、6月13日には、対ドル為替が1ドル=135円台に突入。わずか半年足らずで20円も円安が進んだ。これにより、原油などのエネルギーや小麦などのさらなる値上げは免れないだろう。
物価が上がること自体は、大きな問題ではない。物価だけが上がり続け、賃金がまったく上がっていないことが問題なのだ。
他国では物価上昇率を賃金上昇率が上回っている一方で、わが国の同期間の名目賃金上昇率は、0.96倍。上がるどころか、下がっているのだ。OECD(経済協力開発機構)の調べによると、日本人の年間平均賃金は約440万円。1997~2020年にかけて、名目賃金はアメリカやイギリスでは2倍以上、韓国では3倍近く上がっているのに対し、日本は30年間ほぼ横ばい。年によってはマイナスになっている。これは、OECD加盟国の中では異例だ。
これがアベノミクスの実態である。安倍政権は「インフレ率2%」を目指して施策を打ってきたが、肝心の国民の賃金を上げる有効な政策がなかった。そこにコロナ禍も手伝って、日本特有ともいえる“政策失敗が招いた経済危機”が白日の下にさらされたのだ。
そこで政権与党・自民党は、今回の参院選に向けて、今年度改正した「賃上げ促進税制」を経済政策の目玉の1つとして掲げている。経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説する。
「前年度よりも給与などの支給額を増やした中小企業に対し、増額分の一部を法人税から控除できる制度です。しかし、この制度はまったく意味をなさないでしょう。なぜなら、日本企業の7割が、そもそも法人税を支払っていないのです。しかも税額控除は増額分の一部なので、企業からすれば賃金を上げるメリットはほとんどありません」