遺産相続の手続きは非常に複雑。その手間を考えると、役に立つ制度やサービス、専門家の力を借りる機会も少なくないだろう。
相続手続きや名義変更には、その都度、相続人全員の戸籍謄本などを提出する必要がある。2017年からは、この提出書類を法務局が無料で作成してくれる「法定相続情報証明制度」ができた。相続実務士で夢相続代表の曽根恵子さんが、解説する。
「亡くなった人の出生から死亡までの戸籍と相続人の戸籍を揃えて法務局に提出すれば、誰が相続人なのかという一覧図にしてもらえます。この一枚で、銀行や証券会社のほか、不動産の名義変更などの手続きができるため、戸籍を集める手間が一度で済む」
戸籍謄本を集めるのも面倒なら、家族や専門家に丸投げすることも可能だ。プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんは、こう話す。
「戸籍謄本の取得は、弁護士や司法書士、行政書士などに依頼することもできます。そのほか、家族などの信頼できる人に財産の管理を任せて、遺産分割の承継先まで指定できる『家族信託』や、判断能力を失う前から公正証書遺言を作成しておくなど、相続準備の手間を省ける制度や相談口はいくつかあります」
金融機関の代理人カードをつくって家族に渡しておけば、もしものときに自分の銀行預金の管理を任せることができる。また、三菱UFJ銀行などでは、認知症などを発症した際に、あらかじめ委任しておいた親族に証券取引などの管理を任せられる予約型代理人サービスがある。
預貯金の引き出しや行政手続きなど、日常生活にかかわるお金の管理は、各自治体の社会福祉協議会による「日常生活自立支援事業」を利用できる。
実際に相続が始まったら、専門家の手を借りなければならなくなるケースも出てくるかもしれない。円満相続税理士法人代表で『ぶっちゃけ相続』著者の橘慶太さんがアドバイスする。
「相続争いになりそうなら弁護士に、相続税対策がしたいなら税理士に、争いも相続税もないが、よりスムーズに分割協議を済ませたいなら司法書士か行政書士に相談してください。費用はいずれも、遺産総額の0.5~3%ほどが目安です」