親は常に子供の心配をしているものだ。しかし、時にその“心配”や“干渉”が過剰になってしまい、その結果「毒親」と呼ばれるケースもある。自らの“過干渉”ゆえに娘から毒親と言われた60才主婦の女性の実体験をもとに、親子関係をどう築くべきか専門家がアドバイスする。
娘が突然の退職「ママって毒親だと思う」
私の宝物は娘です。25才でわが子を授かったときは、この子のためなら私の命なんて惜しくないと思いました。この娘だけを立派に育てるために、ほかに子供をつくらないと決意したくらいです。新生児の頃から絵本を読み聞かせ、子守唄を歌い、モーツァルトなどのクラシック音楽を聴かせました。
たくさんの可能性を与えたくて、2才で英会話とリズム体操、3才からは水泳、バレエ、ピアノを習わせました。週末ごとに美術館や博物館、ミュージカルやオペラ、歌舞伎にも連れて行きました。
食事は完全無農薬のお野菜や国産肉を使い、食後の歯磨きも徹底。歯は健康の礎ですからね。小学6年生までは、私のひざに娘の頭をのせて、磨いてあげました。家以外の環境も大切です。娘が悪い人間と交際をしないよう、小学校からお受験をさせて、大学まで一貫の私立女子校に入れました。
家に帰ると夕飯を食べながら、今日あったことをすべて話してくれましたし、私のアドバイスも聞いてくれました。ですからずっと、母娘関係は順調だったんです。でもこのコロナ禍中に、夫の口利きで就職した会社を突然、辞めてしまったんです。
残業が続けば、会社に一言注意をしてあげたし、部署だって社長に頼んで花形に異動させてあげた。だから、居心地はよかったはずなのに……。娘ももう35才ですから、この年でいま以上の会社への転職は難しいはずです。
それほどのことをしたのだから理由を聞くと、私が会社にした進言が不満だったようで、「ママって毒親だと思う。私にしてきたことは虐待だ」なんて怒るんです。遅い反抗期でしょうか。これまで手塩にかけて育ててあげたのに、この言いようはひどい裏切りです。もしかしたら会社の人間が悪くて毒されたのかもしれません。いまはひとり暮らしの準備を始めている娘が、心配でたまりません。(60才・主婦)