岸田政権は年金改悪プランを急ピッチで進めようとしている。本誌・週刊ポストは10月21日号で、財政破綻が迫っている国民年金(基礎年金)の財源不足を穴埋めするため、厚労省がサラリーマンが加入する厚生年金の給付額を減らそうと計画していることを報じた。「サラリーマン年金」の減額である。
自営業者やパート・アルバイト、無職の人が加入する国民年金は保険料の未納率が高く、財政は火の車だ。そこで保険料が給料天引きで取りっぱぐれのないサラリーマンの厚生年金の金が狙われているのである。
厚労省はさらに改悪第2弾として、国民年金の加入期間を現在の40年(20~60歳まで)から45年に延ばし、65歳まで保険料を支払わせることを検討している。
国民年金加入者はもちろん、長年、厚生年金に加入してきたサラリーマンが65歳未満でリタイアしても、強制的に国民年金に加入させられて65歳まで保険料を支払わなければならなくなる。年金制度に詳しい「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏が怒る。
「いい加減にしろと言いたいですね。そもそも国民年金制度は20歳から40年間保険料を支払い、原則65歳から年金を受給する仕組みです。半世紀以上にまたがる制度がコロコロ変わると国民は人生設計ができない。
だから政府は2004年の年金大改革で保険料を毎年引き上げ、年金支給額を徐々に減らしていく改革を行なった後、“国民に負担を強いるけれども、これで年金制度は100年安心”と説明してきたわけです。それから20年しか経っていないのに、加入期間を45年間に延長するという。これは制度の抜本的変更です。国民に負担を強いた100年安心改革が完全に失敗だったということです」
北村氏は、今回の岸田改革案は2つの意味で“バカヤロー改悪”だと指摘する。
「1つ目は今述べたように、『100年安心』と言いながら、さも“ちょっと見直します”といった態度で制度の根幹を変えようとしていること。もう一つは保険料を負担する現役世代にどんどんしわ寄せが行き、年金不信を高めることです。
年金は世代間扶養の仕組みです。現在40代の人でいえば、これまで20年以上保険料を払ってきて、この先65歳まであと25年近くも払わなければならなくなる。しかし、こんなにコロコロ制度が変わると、払い終わった頃に本当に年金はもらえるのかという不安が強まる。制度の支え手に信用されなければ、年金制度はもたない。すでに受給している世代にもかかわってくる問題です」