ここ数年、コロナ禍で年末年始の帰省を自粛する時期もあったなかで、家族がゆっくり話し合える機会は有意義に活用したい。「葬儀」もその一つかもしれないが、その常識も大きく変わっている。
もともと、身内だけの「家族葬」が増えていたなか、新型コロナの拡大でその流れが加速した。葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子氏が言う。
「緊急事態宣言下の頃は、身内だけの葬儀がほとんどでした。最近それが少しずつ戻り、知人・友人もお別れに訪れる葬儀になっています。病院や老人ホームの面会制限が厳しいので、最後のお別れはしっかりやりたいということでしょう。ただし、通夜ぶるまいなどの会食は自粛することが多いです」
元通りになったものもあれば、そうでないところもある。別掲表は一般的な葬儀の12のプロセスだが、コロナ以降に増えたのが、通夜を省略する「一日葬」だ。吉川氏が言う。
「一日葬を選ぶ場合も、家族が“手順を省略してしまった”などと負い目を感じる必要はありません。昔は家族が夜通し遺体に付き添う夜伽という習俗があり、そこにお別れしにくる人が増えて儀式化したのが通夜です。一日葬は昔のように通夜を家族だけで過ごすかたちに近いとも言えます」
また、告別式もやらず火葬のみの「直葬」という選択肢も出てきた。
「火葬のみでも、亡くなってすぐ火葬場に行くのではなく、ご遺体を安置します。法律でも亡くなってから24時間は基本的に火葬できないと決まっている。最近は友人・知人がその安置場所にお別れをしたいと訪れるケースもあります」(吉川氏)