65歳以上の「ひとり暮らし」が、男女ともに急増している。1980年には約90万人だったのが、2020年には約670万人まで増えた。「おひとりさま」になってから相続発生までの間に様々な難しさがある。
贈与や同居について慎重に判断しながらも、きちんと遺言書を残すことが大切だ。だが、配偶者に先立たれた後は、遺言書をどう扱うか難しいケースもある。
『トラブル事例で学ぶ 失敗しない相続対策』著者で吉澤相続事務所代表の吉澤諭氏は「遺言書を書いたことやその内容は子供に教えるべきなのか」という質問をよく受けるという。
「答えはケースバイケース。信頼できる長男が近くに住んでいる場合などは伝えておくべきでしょう。自筆の遺言書を自宅で保管している場合、誰かに存在を知らせておかないと日の目を見ない可能性もあるからです。
一方、遺言書を作ったと伝えた後に、子供たちが内容をあの手この手で聞いてくるケースもある。そういう場合、無用なトラブルを招くので内容は教えないほうがいい」
とはいえ基本的には遺言書の記述は具体的にしたうえで、「なぜそういう分け方にしたのかできれば元気なうちに子供たちに話しておく。さらに付言事項にも書き込んでおくと、考えが伝わりやすくなる」(吉澤氏)という。
ひとり身の老後には“子供をアテにしすぎない”という割り切りも必要そうだ。それが不幸を避ける智恵になり得る。
※週刊ポスト2023年2月24日号