わが友アルビン・トフラーの「慧眼」
そんな私の2022年からの大テーマは「21世紀の新しい経済学」である。なぜ今、日本経済はうまくいかないのか。世界はどういう経済環境に入ろうとしているのか。その中で、企業やビジネスパーソンは何を準備して、どう生きていくべきか──。
それを考えるためのキーワードが、新著のタイトルともなった「第4の波」だ。
これは、アメリカの未来学者で、私の友人でもあったアルビン・トフラー氏が1980年に上梓したベストセラー『第3の波(THE THIRD WAVE)』をヒントにしたものである(以下の引用は、徳岡孝夫監訳・中公文庫版1982年刊による)。
トフラー氏は「第1の波」の「農業革命」によって農業社会、「第2の波」の「産業革命」によって工業化社会になったのに続き、次は「第3の波」の「情報革命」が起きて脱工業化社会になると主張した(図を参照)。インターネットが普及する約20年も前に、IT社会の到来を予見していたのである。
その慧眼は畏るべきもので、近現代の文明を支配していた巨大な潮流と、1980年代以降の世界の変化の波を、ものの見事に分析していた。
たとえば、同書が書かれたのは、ちょうどパソコンが誕生・普及し始めてまもない時期で、〈家庭や個人が使うコンピュータは、五年前はゼロに近かったが、今日では米国の居間、台所、書斎で三〇万台のコンピュータがデータを処理している〉といった状況だった。
そうした時代に、トフラー氏はコンピューター産業やエレクトロニクス産業の爆発的な発展、あるいはエネルギー危機などが追い風となって、「第3の波」の勢いがさらに加速していくと予想し、あらゆる局面で大きなうねりとなっていくと予言した。