“普通の声”でアナウンスする車掌が増えた
現在は、かつてにくらべると、独特な声でアナウンスする車掌は減りました。そのおもな理由としては、次の4つが挙げられるそうです。
【a】車内の騒音がかつてより小さくなった
【b】車内の放送設備の音質が上がった
【c】自動放送を実施する列車が増えた
【d】女性の車掌が増えた
【a】と【b】は、電車などの車両の改良によって【1】と【2】の状況が改善され、乗客が車掌の声を聞き取りやすくなり、独特な声でアナウンスをする必要性が低下したことを意味します。
今回インタビューに応じてくれたJR のあるベテラン車掌によると、社内ではJRグループ発足直後ごろから車掌は普通の声でアナウンスするように教育を受けたそうです(すべてのJR旅客会社に該当するかは不明)。あの独特な声は、車内放送が聞き取りやすくなった今となってはお客様にとって耳障りになりかねないので、サービス上好ましくないというのがその理由です。
このためあの独特な声は、JRでは聞く機会が減り、民鉄や地下鉄のみで聞かれるようになったようです。
【c】の「自動放送を実施する列車が増えた」は、車掌がアナウンスする機会を減らすことにつながっています。とくに運転士のみが乗務するワンマン運転を実施している列車では、車内放送がほぼ自動化された例が多くなっています。
【d】の「女性の車掌が増えた」は、男性よりも声が高い女性がアナウンスすることで、その声を乗客が聞き取りやすくなったことを意味します。日本の鉄道では、JRグループ発足前年(1986年)の男女雇用機会均等法の施行を機に、女性の車掌が増えました。
つまり、車内で放送を聞き取りやすい環境が整ったことや、自動放送の普及によって肉声で車内アナウンスする必要性が低下したことが、あの独特な声を聞く機会が減ることにつながったようです。