大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

世界はAI・スマホ社会の「第4の波」へ 一方で「日本は第3の波で足踏み中」と大前研一氏指摘

「時間」だけでなく「場所」からも解放

 一方、欧米やアジアの一部は、すでに「第4の波」に移行している。IT社会では国や地域によって標準が異なっていたが、AI・スマホ社会ではOS(基本ソフトウエア)がアンドロイドとiOSしかなく、そのシステムは事実上1つだけである。どちらのOSであっても、コンピューターネットワークにつながってさえいれば24時間、世界のどこにいても誰もが同じサービスを利用できる。

 これは、言い換えれば「国境がない」ということだ。工業化社会のボーダレス化は、日本で確立した商品を欧米やアジアで売ると同時に、生産の一部を東南アジアや中国に持っていく、というものだった。いわゆる「国別戦略」であり、それを考えることが私の経営コンサルタント人生の大半だった。

 しかし、国境がないAI・スマホ社会は国別戦略が必要ないから、民泊仲介サービスの「エアビーアンドビー」や配車サービスの「ウーバー」などのように、あっという間に世界化できる。つまり、優れたシステムさえ構築すれば、スマホ1つで世界を動かせるのだ。

 しかも、スマホは生体認証機能が搭載されているし、位置情報もわかるから、マイナンバーカードや健康保険証、運転免許証、パスポートより、よほど安全で揺るぎないID(身分証明)になる。そもそもそれらの個人データは、すべてスマホに入ってしまう。スマホベースの「第4の波」は、国別に波及した「第3の波」とは次元が違うのである。

 だから、エアビーアンドビーやウーバー、あるいは日本のタクシーアプリ「GO」などのビジネスが成り立っているし、世界中からWeb会議に参加できる。トフラー氏は、『第3の波』で「新しい社会では時間から解放される」と説いたが、「第4の波」のAI・スマホ社会では、時間だけでなく「場所」からも解放されるのだ。

※大前研一『第4の波 大前流「21世紀型経済理論」』より一部抜粋・再構成

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。