デジタルなら手書きじゃなくてもテキストで書けばいいじゃないかと思うかもしれません。私も全てテキストでメモを取っていたことがありました。しかしこれだと、どういうわけかあまり記憶に残らないのです。書いている内容も、面白みがなく堅い感じになってしまいます。
私は脳科学の専門家ではないので詳しくはありませんが、人は基本的には「絵」で記憶すると言います。テキストのメモでは、画一的な文字が並んでいるので「絵」として認識するのは難しいのではないでしょうか。一方で、手書きで書いた文字は一つひとつの文字に味があり、その時の自分の感情を写しているようにも感じます。後から思い出す時も、なんとなくそこで書いた文字の全体像を思い浮かべることが珍しくありません。
そもそも、キーボードやフリック入力で文字を打つ時には脳の容量をかなり使ってしまい、自由な発想が難しくなるとも言われます。今私たちがやろうとしているのは「未来」という不明瞭なものを想像することです。したがって、発想を「飛ばす」という意味でも、手書きの有効性は高いのではないかと感じています。
とにかく、まずはメモを取り始めることが大切です。基本的にはあなたがやりやすい書き方で書けばよいのですが、それではこの本の意味がなくなってしまうので、私が行っているメモの描き方をご紹介します。
「事実」と「未来」を分けて書く
書く内容としては、3CおよびSWOT分析(*)です。できれば見開きのページを使い、左側に自分が調べた「事実」や「ロジカルに導き出せる内容」を記載するようにします。こちらは主に「過去」のことが中心です。
【*3C分析:Customer(市場・顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)の3つの「C」について分析する方法。*SWOT分析:事業の状況をStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの観点から分析する方法】
一方で、見開きの右側のページには「未来」のことを書くようにします。ここではまず、左側の事実から導き出される「ポジティブシナリオ」と「ネガティブシナリオ」を書くことを意識します。未来といっても手がかりなしで自由に発想するわけではありません。事実の分析から導き出される要因から導き出されたシナリオから、最もポジティブなものから最もネガティブなものの間にあなたのストーリーが入らなければなりません。
その「幅」の範囲内で、様々に思いをめぐらし未来を想像することになります。左側の「事実」を書くページは、多少追加されていくことはあっても、大きく変わることはありません。一方で右側の「未来」を描くページは無限に膨らみます。最初に分析した時から時間が経てば、また新しい発想が浮かぶことがあります。これこそが企業分析の醍醐味です。