会社員・公務員につきものなのが「人事異動」だ。新年度を控えた3月に、人事異動の内示が出るという企業もあるだろう。どこに勤めるかによって、人事異動の頻度も変わってくるだろうが、「定期的な人事異動は弊害も大きいのではないか」と指摘するのは、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏だ。中川氏は知人から「人事異動をきっかけに、会社を辞めることにした」という話を聞いたという。いったい何があったのか。中川氏が人事異動の“負の側面”について考察する。
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日本の会社には、定期人事異動というものがあります。公務員ならば2~3年、会社員ならば3~5年に一度ぐらいで部署異動する、というケースも多いのではないでしょうか。これまでやっていた業務とまったく違う、専門外の部署に異動するケースもあるでしょう。
私のようなフリーランスが、長い付き合いになる会社と仕事する場合、年度末の会議にこれまで見たことがない人が参加していることがあります。すると普段付き合っている担当者が「実は僕、異動することになりまして、後任の山田です」などとその人を紹介する。そして「引き継ぎはちゃんとしておきますので、どうかご安心ください」と言われる。
こちらとしては、元の担当者の能力や知見を、そのままこのプロジェクトのために使って欲しかったな……なんて思うこともあります。結局10年以上続くプロジェクトの場合、外注先である私がもっとも古参のスタッフになったりすることもある。正直、その担当者の能力や適正に問題があるのならともかく、そうでないのであれば、人事異動なんかさせないで、ずっと一緒にプロジェクトを推進していければいいのに、と思ったりします。
人事異動がうまくいかないと、プロジェクトのパフォーマンスや売り上げにマイナス影響が出ることがあります。ただ、それ以外にも人事異動の弊害はあります。それは、「人事異動によって会社を辞める人がいる」ということです。むしろこちらの方が、大きな問題かもしれません。
「上司がいる限り、同じような扱いを受けるかも」
少し前に、しばらく会っていなかった知人男性・Aさんから、「今度飲もうよ」と誘われました。「あぁ、あいつは仕事楽しそうにやっていたから順調で、久々に飲む余裕が出てきたんだな、と思って行ってみると話が違う。
「実はさ、会社、やめたんだ。今は有給消化中」
こう切り出す知人は、スッキリとした表情に見えつつも、どことなく寂寥感が漂っています。どうしたのかと聞くと、「異動した部署の上司と合わなかった」と言うのです。