中東において、中国の影響力がますます拡大するのは必至だ──。サウジアラビア、イランは3月10日、中国の仲介によって外交関係を回復させた。習近平国家主席によるサウジアラビア、イラン両国の隣国友好関係を発展させようとする積極的な呼びかけに応じ、サウジアラビアの国務大臣、イラン最高国家安全委員会秘書らが北京を訪問、3月6日から10日にかけて会談を行った。
その成果として、サウジアラビアとイランは、双方の外交関係を回復させ、2か月以内に双方が大使館、代表機関を再開させ、相互に大使を派遣、双方の関係強化について討議することなどが決まった。3か国は、地域の平和と安全を強化するよう自ら進んで尽力すると表明している。
中東の二大大国であるサウジアラビアとイランは、同じイスラム教国家でありながら、前者はスンニ派、後者はシーア派が多数を占める。両国は2016年、国交を断絶したが、宗派対立がその背景にあるだけに問題の根は深く、その点を踏まえて考えれば中国の果たした役割は大きい。仲介の成果は両国の外交関係の回復に留まらず、中東全体の平和と安定をもたらす。中東は中国の覇権内に入りつつあるといえよう。
元来、中国とイランは友好関係にあったがここ数年、サウジアラビアと中国の関係は急速に親密になっていた。習近平国家主席は昨年12月、サウジアラビアを公式訪問したが、その成果が早速、今回のような形となって表れている。
中国とは逆に米国の中東への影響力は大きく削がれているが、それはブッシュ政権(2001年1月~2009年1月)以来の度重なる中東戦略の失敗によるところが大きい。バイデン大統領は昨年7月、サウジアラビアを訪問、人権問題で冷え込んだ両国関係の改善や原油増産を要求したりしたが、主だった成果は得られなかった。
中東からの石油輸入を激減させる米国
中東における中国の影響力拡大、人民元建て取引の積極導入の働きかけは、ドル覇権の縮小を通じてグローバル金融市場を揺さぶりかねない。
サウジアラビアの石油(原油)輸出額(2021年、UNCTADより)は1664億ドルで世界最大規模を誇るが、その最大の輸出先は中国である。サウジアラビアと中国との貿易総額(2021年、グローバル時報データより)は412億8000万ドルであるのに対して、サウジアラビアと米国との貿易総額は160億9000万ドルに過ぎない。