禁煙ルームで堂々と喫煙する中国人観光客に、部屋が汚れているとクレームをつけて「ポイント」をもらおうとするアメリカ人観光客……。近年、外国人観光客の急増に伴って、国内のホテルでは外国人の宿泊者の受け入れ態勢を強化しているが、一方で様々な文化的背景を持った人たちが数多く訪れるようになったことでトラブルも後を絶たない。代々、有名ホテルを経営している家に生まれ、小さい頃から多くのホテルを見てきた女子大生コラムニスト・小林千花氏がリポートする。
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日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2018年の訪日外国人客数は3119万人。史上初めて3000万人を突破した。今年は3500万人を超えると予測されている。観光業界にとっては引き続き追い風となるが、一部では外国人観光客によるトラブルも発生しているようだ。
そのひとつがドタキャン問題である。
東京都内の高級ホテル。高級ホテルでは、予約が入った時点でコンシェルジェ宛にリクエストが入ることが多い。あるとき、外国人観光客から予約が取れないことで知られる高級寿司店を予約して欲しいというリクエストが入った。信頼の厚い老舗ホテルからの連絡ということもあり、寿司店は予約できたそうだ。
コンシェルジェは、直前でキャンセルした場合はキャンセル料が発生する旨を伝えた。しかし、連絡もなくドタキャンされたという。
同様のケースは多く、「昼を食べすぎたから」「寿司の気分じゃなくなった」などあまりにもマイペースな理由でドタキャンする外国人観光客も多いとか。しかも、キャンセル料を払わない客もいるとのこと。ドタキャンしてしまうと、ホテルとお店が今まで築き上げてきた信頼関係が崩れてしまい、空いていても予約が取りにくくなってしまうそうだ。
ホテル関係者は「ドタキャンするのは一部のお客様ですし、せっかく日本に訪れてくれたお客様の要望にはなるべく応えたいのですが、同様のケースがこれ以上多くなると、ホテルの信用問題に関わる深刻な問題になります」と懸念していた。
別の都内高級ホテルでは“ハネムーン詐欺”が起きた。そのホテルでは、お客様の誕生日や記念日に、ホテルマン個人の判断でシャンパンサービスを行えるという。
ある日、アメリカ人観光客がチェックインの際に「ハネムーンで日本に旅行にきた」と話した。そのため担当したスタッフがハネムーンのお祝いにシャンパンサービスをしようと、お客様情報を確認。すると1年前にも、半年前にもハネムーンと言って同ホテルに宿泊していて、そのたびにシャンパンのサービスを受けていたとのデータが残っていたそうだ。
まさか1年以上にわたる長いハネムーンではないだろうから、同ホテルの関係者は「シャンパン目的だったのでは……」と語る。もしかしたらこのアメリカ人観光客は、世界中のホテルで同じことをしているのかもしれない。
別の都内高級ホテルでは「失踪事件」が起きた。チェックインしたのは、アメリカ人の5人家族。翌日、フロントに1本の電話が入った。
「娘が失踪した。部屋に遺書がある」