日米の金融政策の違い
そうした見方から、戸松氏は「今回の件が直ちに金融危機に発展するとは考えにくい」としつつ、「コロナ後の超緩和バブルの反動が、米国の一部銀行を襲ったということで、同様にバブルに踊った金融機関がいくつか後に続く恐れはあります」と指摘。
では、日本の銀行への影響はどうか。
「日本の地銀の場合、地域は限定されているかもしれませんが、融資先や預金者などのセクターは分散されていることが多いので、一極集中のリスクはそこまで高くない」
加えて、日米の金融政策の違いもある。
「そもそも金融緩和政策を続ける日本はそこまで長期金利が上昇していないし、今後、日銀総裁の交代後も、米国のような大幅な政策金利の上昇や長期金利の上昇は起こりにくいと考えます。財政投資を積極的にやってこなかったこともあって、米国と比べて景気はそれほどよくなく、インフレにしても内需に起因した“ディマンドプルインフレ”ではなく、外需に起因する“コストプッシュインフレ”なので、インフレ対策として政策金利を上げる意味があまりないからです」
10年にわたって続いてきた「異次元の金融緩和」は、国債の流動性低下をはじめさまざまな副作用を生み出してきた。だからといって、日銀の植田和男・新総裁が就任後すぐに金利を大幅に引き上げることは考えにくく、米銀行の破綻につながった要因は日本では想定しにくい現状もあるという。
「なによりリーマン・ショックの際は、サブプライムローンに関わる大きなレバレッジをかけたさまざまな金融商品がありましたが、今回はそうではない。また、すでに米財務省、FRB、米連邦預金保険公社(FDIC)は保護する預金の上限を撤廃して預金の全額保護に乗り出し、FRBは預金流出の恐れがある銀行に緊急融資も表明。金融危機へと波及しないように次々と対策を打ち出しています」
米銀行の破綻を受けて日本の銀行株も株価下落に見舞われているが、戸松氏は「今後の(小幅ではあるものの)日本の金利上昇による期待感からの上昇まで見据えれば、銀行株が急落することはあっても、それは一時的なもので終わるのではないでしょうか」と分析している。(了)