約8トン分のモノを捨てたのに…
そんな私も、2020年10月、東京から佐賀県・唐津市に拠点を移した際は、本当に大変でした。その顛末は〈モノの処分はこんなに大変! 運ぶ&捨てるで16万円超の悶絶体験〉という記事にも書いたのですが、約8トン分のモノを捨て、段ボール25箱を宅配便で引取業者に送りました。この時「必要最低限なものだけを残した」と思ったのですが、まったくそんなことはない。タイに来て、「それでも余計なものばかりだった」と感じてしまいました。
何しろ唐津で生活していた2年半の間、25箱分の段ボールの内、10箱は開けることもなかったのです。これらはもう中身も見ずに捨ててしまってもいいかもしれません。現在、自宅に置いてある家電類(細かいものは除く)は、炊飯器、電子レンジ、オーブントースター、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、ドライヤーのみ。掃除機もありません。
結局、「1年間使わなかったものは不要なもの」という判断でいいのではないでしょうか。今回それをしみじみと感じました。となれば、現在の家は2DKで家賃約6万円なのですが、1DKでもっと安い家賃の家に引っ越すことも可能になるでしょう。
いや、薄々気付いてはいたんですよ。別に私は「丁寧なくらし」だの「おしゃれライフ」「素敵なミディの豊かな生活」なんかにはまったく憧れていない。だからこそ北欧の家具なんてないし、「お客様が来た時用に」と1セット20万円もするようなお揃いの食器一式もない。
食事は毎度同じボウルのような皿を使っていますし、焼き魚を食べる時は「ご自由にお取りください」と誰かの家の前に置いてあった、セブン-イレブンのキャンペーンの景品である『あらいぐまラスカル』の皿を使っています。電子レンジにも強く、優れたヤツです。別に誰かを家に招いて「うわー、素敵~、憧れるぅ~」なんて言われたいワケではない。その様子をSNSにアップしてホメられたいワケでもない。となると、頑丈で壊れなければ食器なんて何でもよくなってしまうのでした。
って、よく考えたら「ミニマリスト」という若干トレンディな生き方ではなく、ただの「面倒くさがりで虚栄心がない」生き方でしかないですね……。「生活アドバイザー」的な仕事の方、この手の生き方に少しハイセンスな名前をつけてくださーい。って虚栄心まみれか。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『捨て去る技術 40代からのセミリタイア』(インターナショナル新書)。