日本全国で増えているという「空き家」に関するトラブル。しっかり管理する人がいても、近隣住民が空き家の存在を嫌がるケースもあるだろう。空き家となった実家を管理しながらも、隣人からのクレームと受けているというトラブルについて、弁護士の竹下正己氏が、実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
両親が他界し、実家が空き家になりました。週2回ほど家の中や周りの片付けを行っているにもかかわらず、隣人からのクレームが絶えず、精神的に参っています。隣人は勝手に敷地に入って木の枝を切ったり、民生委員と一緒にやってきて「雑草を刈って」などと言ってきます。いまのところ要求にはすべて応えていますが、隣人の個人的な感情に振り回されているようで納得できません。どのように対応したらよいのでしょうか。教えてください。(新潟県・62才・主婦)
【回答】
空き家になった実家を放置していると、雑草が繁茂して隣家に入り込んだり、猫などの小動物が棲みついて繁殖したりして周囲に迷惑をかける可能性があります。さらに、建物が朽廃して屋根や壁が崩れ、隣家に損害を与えたり、通行人にけがをさせたりすると、建物所有者として民法上の土地の工作物責任に基づく賠償責任を負うことになります。
あなたの場合、週2回実家を訪ねて片付けをしているのですから、こうした状態にはなっていないはずです。隣人から苦情を言われるのは解せないことでしょう。
とはいえ、民生委員が隣人の苦情に同道しているのは看過できません。民生委員は住民の相談に必要な支援を行う役割で、普通は人格識見に優れた人が委嘱されます。そうした民生委員が隣家を支援するには何らかの理由があると思われます。
たとえば、雑草が繁茂する許容度について、あなたの理解と実家周囲の住民との間に隔たりがあるのかもしれません。
空き家になっている実家については近所のお世話にならざるを得ないことが多々あるでしょう。また将来売却することなどを考えている場合にも、良好な関係を保っておくことが売りやすくなる要因になります。
ですから、まずは民生委員の意見も含め、隣人の苦情の内容を改めてよく聞くことをおすすめします。そのうえで理不尽なクレームと判断したら、民生委員にそれを伝え、隣人への説得を依頼すればよいでしょう。