ちょうど1年前のこの連載で、2016年には円安ドル高のトレンドに大きな変化が起こり、短期的にはなんらかの金融危機やリスクオフの局面があるかもしれない、と記した。
実際、120円ほどでスタートした16年の米ドル/円相場はわずか2週間でいきなり5円近く急落し、さらに2月半ばには110円台まで下落する波乱のスタートとなった。
6月にはイギリスの国民投票で、大方の予想に反しEUからの離脱を決めた「ブレグジット・ショック」が起こり、米ドル/円は1日で8円近い下落に見舞われた。
これらの急落局面を指して、「羊飼いの予想が的中」といってくれた読者もいたが、正直これらのショックは羊飼いが警戒していた規模のものではなかった。
というのも、16年はアメリカの利上げ延期と大統領選が重しになり、大局的にはどっちつかずな相場が続いたという印象の方が強い。急落局面はあったもののポンド以外は一時的な下落にすぎず、ダラダラと下げては戻す方向感のない横ばい相場に戻っている。
11月の「トランプ・ショック」で乱高下する局面もあったが、1年を通して見ると、ゆるやかに円高方向へ向かったものの、金融ショックというほどのものはなかった気がしている。
振り返ってみれば、ドイツ銀行の信用不安や中国経済の不振などの「火種」を抱えながらも、深刻な金融危機というほどの局面は訪れなかった。結局は「相場が動きたがらなかった」ということなのかもしれない。
上か下かにかかわらず、相場には「行きたがっている方向」があり、様々なリスク要因はその方向へのスタートを切る号令にすぎない、と羊飼いは考えている。
16年にはその引き金になってもおかしくないイベントは複数あったものの、まだ相場が大きく動き始める時期ではなかったのだろう。