リーマン・ショックからの回復局面を謳歌する「幸福の絶頂期」は終わったものの、世界の金融市場はまだその余韻に浸っている状態だといっていい。
16年にはこの幸せな時もいよいよ終わりそうだと不安視されてはいたが、実際には終わることなく続いていたのだ。
溜め込んできたエネルギー放出の引き金は
しかし、16年相場の重しになっていた大統領選を通過し、追加利上げが見込まれる12月のFOMC(連邦公開市場委員会)という大イベントを終えれば、相場はいよいよ溜め込んできたエネルギーを放出する局面へと転換することは十分あり得る。
17年もその引き金となりそうなリスク要因には事欠かない。
たとえば、上昇を続ける中国の不動産価格は足元で過熱感を増している。多くの地方政府が住宅購入を制限するバブル抑制政策を打ち出しているが、さほど効果は上がっておらず、いつ「崩壊」のXデーが来てもおかしくない。
また、コモディティ価格は資源国通貨はもちろん為替相場全体に大きな影響を与えるが、アメリカの利上げで金価格が大きく下落することがあれば、深刻なダメージを受ける機関投資家もありそうだ。
原油価格では、OPEC(石油輸出国機構)がようやく減産に向けて動き出してはいるものの、その行方は不透明だ。
万一、加盟国の足並みが乱れることがあれば原油価格は再び40ドルを切ることも考えられ、そうなれば為替相場にもリスクオフの暴風が吹き荒れることは避けられそうにない。
可能性としては大きくないが、日本のテーパリング(量的金融緩和の縮小)にも注意を払っておきたい。
9月に金融緩和の中心を「量」から「金利の調節」へと変更する新しい枠組みを発表したが、株式市場の反応は鈍く、日銀にはもう切れるカードがなくなっている。
もちろん、黒田東彦総裁がテーパリングを明言することはないだろうが、実質的にもう手詰まりと市場が判断するようなことがあれば、相場は大荒れどころでは済まない。まさに「逆アベノミクス」とでもいうような、深刻な巻き戻しが起こることも想定される。
日本と同様に金融緩和を続けているEUも同じ問題を抱えている。こちらはすでにテーパリングの観測報道が出ており、より現実味を帯びてきている。