保護されるのは1000万円まで
「ペイオフ」という言葉をご存じでしょうか? 払戻の保証を「元本1000万円とその利息まで」に限る制度で、2005年4月以降全面的に開始され、いっとき話題になりました。実際、2010年に破綻した日本振興銀行には、ペイオフ制度が発動されています。おそらく今後、日本で銀行破綻があれば、今回のアメリカでの全額保護のような特例は期待できず、ペイオフ制度が発動されると思っていたほうがよさそうです。
同じ銀行の口座は合算して判断
ペイオフは、ひとつの銀行の預金額の合計で計算されます。“ひとつの口座につき”ではなく、“預金者1人あたり1金融機関ごと”なので、同じ名義で、複数の支店に口座を持っていれば、それらの預金額が合算される“名寄せ”が行われます。
もし1200万円を預金していれば、1000万円までは保護されますが、オーバーした200万円については、銀行が破綻処理を済ませたあと債務カット率に基づいて払い戻されることになります。たとえば債務カット率が30%なら、60万円は戻ってきません。ただ、1000万円を超えた部分が全額カットされるわけではないので、その点は一安心かもしれません。
万が一の破綻に備えて
リーマン・ショック以降、金融機関の財務状況はかなり改善され、監視も厳しくなっていることから、破綻する心配はかなり小さいと考えられています。とはいえ、万が一に備えておくことが大切です。
シンプルな方法としては、ひとつの銀行に1000万円以上預金しないことですが、たくさん預金がある人にとっては、管理が面倒くさくなるというデメリットもあります。
まずは、名寄せの対象にならないよう、できる限り口座の名義をバラしておくのが一案です。たとえば個人事業主の場合は、事業用の口座名と、プライベート用の口座名を分けておくなど。また、家族の預金も別々にカウントされますので、まとめてひとつの口座にせず、各個人の口座を用意するのも選択肢のひとつです。
全額保護の対象となる預金も
金融機関を分散したり、名義を分けたりというのが煩わしい場合は、全額保護の対象となる預金に切り替えるという“裏ワザ”もあります。
預金保険制度では、当座預金と、利息のつかない決済用預金は制限なしの全額保護となります。当座預金の開設には審査がありますが、利息のつかない決済用預金への切り替えはわりと簡単にでき、たいていの銀行で対応しています。口座番号やキャッシュカード、通帳などは、そのまま使えることが多いので、その点でも煩わしさはあまり感じないでしょう。
利息がつかないというデメリットと、全額保護されるというメリット。どちらを重視するかは、人それぞれですが、万が一の場合のシミュレーションはしておきたいですね。