ネットやSNSが普及したことで、コミュニケーションのスタイルが多様化している今の時代。他人の言葉や噂話に、過剰に反応してしまうという人も少なくないのでは。優しい人ほど他人の言葉に傷つき、言いたいことを押し殺してストレスをためてしまうこともあるというが、いったいどうやって対処すればいいのか。福厳寺住職の大愚元勝さん(50)に、話を聞いた。
「人間が悩みを持ち始めるのは、幼稚園の年中(4才)くらいからだといわれています。なぜかというと、言葉が発達するからです。言葉が使えるようになると、言葉を通していろいろなことを想像するので、心配や悩みが生まれるのです。
「『いくつになっても人の言葉に一喜一憂し、顔色をうかがってしまう』という高齢者からの相談は多いですね。しかし、人間はいたずらに年を重ねているだけで、中身はそうそう変わらない。『子供の頃の50才はすごい大人だと思っていたけれど、実際自分がなってみるとそうでもない』と感じるでしょう? みんなそう。だから、いくつになっても人の意見が気になるし、噂話に振り回されるんです。
私たちはすべからく言葉で考え、言葉で悩んでいます。唯一左右されないのは、赤ちゃんくらいでしょう」(大愚元勝さん・以下同)
フォロワー数が57万人を超えるYouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」には、1日1000通ほどの相談事が寄せられる。その大半は人間関係の悩み。SNSの普及により、他人への羨望や嫉妬が増幅しているようだ。
「人から発せられた言葉だけでなく、さまざまなメディアから流れるトレンド情報、ニュース、広告など、私たちは日々あらゆる『言葉』の波を浴びています。確かに言葉は否応なく耳に入ってきますが、あなたを本当に振り回しているのは、そうした言葉ではなく、それを受け取ったあなた自身なんです。同じ言葉で、振り回されない人もいるでしょう?
自分が頭の中に取り込んだ言葉が自分を振り回す。ここを勘違いしてしまうと、心の成長は止まってしまいます。人間は誰でも、大なり小なり外界の情報に影響を受けていて、それ自体を遮断することは不可能です。たとえば、『終活』なんて言葉、昔はありませんでしたよね。でも、『生き生きとした老後を』というキャッチフレーズとともに終活がもてはやされると、『私はダメなんだ』と、イメージに合わない自分を責めたり落ち込んだりする。