しかし、こうした言葉は、誰かが商業的に作り出したものなのだから、それに心を乱される必要はないわけです。
現代は、多くの選択肢の中から好きなものを選べることが『自由』だと思われていますが、選択肢が多いほど、人間は選択に迷い悩むようになります。『自由』とは本来仏教の言葉で、自分の外にあるものに惑わされる生き方をやめ、自分自身を“由”りどころとするという意味なんです」
インドには、人生の指針とされる「四住期」という考え方がある。四住期とは……
1、学生期:心身を鍛えて成長していく時期(学生時代)
2、家住期:働いて家庭を作り、安定させる時期(社会人~定年前)
3、林住期:義務や世俗から解放される時期(定年頃)
4、遊行期:執着を捨て、悟りを求める時期(老年)
中高年になったら、林住期と遊行期を見据えて過ごすことが大事となる。
「中高年のかたがたは、自分自身を見つめるタイミングに来ているのではないでしょうか。そのためには、等身大の自分を『諦め』て、生きることです。
諦めるとは、ネガティブなことではなく、仏教用語で『明らかにする』という意味です。自分の内側に意識を向け、老いとも向き合う。美醜や仕事、健康など、人それぞれの“こうありたい”という葛藤から離れ、『頑張ってきたけれど、私はこれくらいかな』と諦めていく(=等身大を知る)ことで、心がどんどん楽になっていくのです。
そうなると、他人のことはさほど気にならなくなる。どんなにお金持ちでも、老いと死に勝てる人はいません」