新たな生活が始まる新年度。これまで惰性で続けてきたものを手放すことで、新しい自分を生きるチャンスにもつながる。「お財布と心にいちばんいいのは“東京”を手放すことでしょう」と、にこやかに語るのは、経済アナリストの森永卓郎さんだ。
森永さんは1985年に、都心から電車を乗り継ぎ90分ほどかかる埼玉県所沢市の西部に自宅を構えた。以降は都内との二拠点生活だったが、コロナを境に1年のうちのほとんどを所沢で過ごすようになった。
「都心は坪単価500万円ですが、ここは50万円。肌感覚の家賃は都心の3分の1で、物価は3割ほど安い。私は畑で野菜を作って太陽光パネルで電気を自給するので生活費がかからず、ハイブランドがひしめくファッションビルも三ツ星レストランもないから自動的に支出がドカンと下がる。代わりに豊かな自然や動物との触れ合いがタダで楽しめます」(森永さん・以下同)
自然豊かな地でトマトを作っているとタヌキやカブトムシがひょっこり現れ、周囲には美しい花が咲き乱れる。
「生活コストが高いとそれを補うため嫌な仕事もがまんするけど、ここに住んでいる限り、まったく必要ない。一緒に畑をしている人たちも『本当に自由で楽しい』と口を揃えます。私の妻は『つまらない町だけど、安全で平和だよね』が口癖ですが……(笑い)」
厄介な人間関係がなく、生活やレジャーにお金もかからず、心豊かに過ごせる。所沢での生活を愛する森永さんは、「都会での生活を手放せさえすれば、地方では何も手放す必要がない」と語る。
「家が狭い都会は生活空間を確保するために大がかりな片づけが必要だけど、地方は何も捨てなくても生活スペースが確保できる。いまはリモートが盛んだし、都会で細かいことを切り詰めたり手放したりするよりも、住む場所を変えれば多くの問題が解決するんじゃないかな」
都会の生活を手放すことで、逆に豊かに生きられるようになったことを、実感しているようだ。
※女性セブン2023年4月13日号