多くの人が不安を覚える老後の生活。長年住んだ場所で最期まで過ごしたいと思う人がいる一方で、住み慣れた場所を離れて老後を送る人もいる。では、老後に地方から都心に移住した場合、どのような生活になるのだろうか。リアルケースを見てみよう。
13年前までは、群馬県で夫と2人、飲食店を経営していたという山口芳江さん(仮名、無職・73才)。店も繁盛しており、死ぬまで働けばやっていけると、息子2人を私立大学に入れるなど、教育費に3000万円以上かけた。ところが、息子たちが手を離れた頃、夫がくも膜下出血で急逝。保険金が1000万円入ったものの、店の営業費と生活費の補てんで10年で底をついた。
「3年前、私も70才になり、ひとりで店を続けるのが体力的にきつくなりました。息子たちに相談したところ、“東京に出てきた方がいい”と呼び寄せてくれたんです」(山口さん・以下同)
地元は車がないと生活できず、雪も降り路面も凍る。先々のことを考えると、東京で生活した方が迷惑はかからないだろうと、店を閉め、住み慣れた街を離れたという。
「次男がアパートを契約してくれました。築30年の木造で、家賃は4万円。これまで移動といえば車ばかりでしたが、東京では電車やバスでの移動がメイン。おかげで足腰が強くなりました。医療機関も充実していますし、年を取ったら都会の方が住みやすいですね」
家賃は長男が、生活費は次男が援助してくれているという。
「私は長男の扶養に入っています。息子にも小さな子供がいるので申し訳ないのですが、“母さんはおれたちを大学に行かせてくれた。親孝行させてよ”と言ってくれて……」