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キャリア

どれだけ努力しても「大谷翔平や藤井聡太になれない」ほぼすべての人たちへ

大谷翔平のように、とてつもない才能をもち、とてつもない努力ができるのは、ごく一部のひとだけという現実(Getty Images)

大谷翔平のように、とてつもない才能をもち、とてつもない努力ができるのは、ごく一部のひとだけという現実(Getty Images)

 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)でMVPの活躍をした大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)について、米経済誌フォーブス(電子版)は今年の年収がMLB選手トップの6500万ドル(約85億円)であると報じている。世界トップクラスの選手になればここまで稼げるようになるのか、と夢も膨らみ、「我が子を大谷翔平のように育てたい」と考える親もいるかもしれない。だが、だれもが努力すれば、かならず報われるというわけではない。最新刊『シンプルで合理的な人生設計』(ダイヤモンド社)が話題の作家・橘玲氏が、努力の効用と、合理的な成功戦略について解説する。

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 日本では、大卒で従業員1000人以上の大企業に勤めている場合、平均的な生涯収入は男性で約3億円、女性で約2億5000万円となっています。これには退職金や定年後の再雇用の収入が入っていませんから、それを加えると大卒男性は3億5000万円、大卒女性は3億円程度を稼ぐだけの「人的資本」をもっていることになる。最近の日本は「衰退途上国」などさんざんのいわれようですが、それでもわたしたちは、世界でもっともゆたかな国のひとつに生まれたという幸運に恵まれています。

 人的資本の大きさは平均的な生涯収入を現在価値に割り引いて計算しますが、病気などで将来働けなくなるリスクを考慮しても、大学を卒業した時点で1億円を大幅に上回る人的資本をもっていることは間違いありません。一方、20代前半なら貯蓄額が100万円を超えることはまれでしょうから、人的資本は金融資本の100倍以上になります。この大きな非対称性を考えれば、資産運用(金融資本の活用)以上に働く(人的資本を活用する)ことが重要なのは明らかです。

 とはいえ、ひたすら努力すれば、それだけで報われるわけではありません。「努力の限界効用は逓減する」という残酷な法則があるからです。最初のうちは努力の効果は大きいが、上達するにつれてその効果は減っていきます。

「努力の限界効用逓減の法則」を示すグラフ

「努力の限界効用逓減の法則」を示すグラフ

 野球でもサッカーでも、10代の頃に真剣に打ち込んで基礎を徹底的に叩き込めば、未経験者を圧倒できるでしょう。ところがある程度の水準を越えると、努力の効果はどんどん減ってくる。高校の全国大会でそこそこ活躍できたからといってプロになれるわけではないし、プロになれたからといって、そのなかで超一流プレイヤーとして頂点に立てるのはほんの一握りです。そこに到達するためには圧倒的な努力だけでなく、圧倒的な才能も必要なのです。

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