期限切れが迫ったネタと知りながら、ごまかして提供するケースもある。
「これ、間もなく期限切れですけど、本当にいいんですか?」
中国地方の大手チェーンの店舗に勤めていたCさんが驚きながらそう問いかけると、上司は笑顔でこう答えた。
「いいのいいの。炙れば大丈夫だから」
こうした“偽装”指示は日常茶飯事だったという。
「期限切れ寸前で変色が始まっているネタは、上司の指示で『炙り』か『漬け』にしました。炙るといってもほんの1~2秒で、ほとんど生のようなものですが、お客さんの目と舌は充分ごまかせる。私は変色したネタがあったら自己判断で捨てていましたが、上司に見つかると『期限が切れても24時間以内なら大丈夫』と謎のルールを指示され、仕方なく炙りや漬けにして出していました。それどころか、忙しい時間帯にはそういった“加工”すらせず、そのまま出すこともありました」(Cさん)
「検査が来たらヤバイね」
再利用はネタだけではない。前出のBさんが語る。
「長く回って鮮度が落ちたネタは、基本的にレーンから外して処分します。でもウチの店舗はレーンから下げたシャリにのりを巻き、イクラやうにの軍艦として“復活”させていました。それを翌日に提供したことも……食品ロス対策と言えば聞こえはいいけど、そうとは知らされず、硬くなったシャリを食べさせられるお客さんの心情を考えるとやり切れません」
寿司に欠かせないわさびやガリなどは使用期限が守られないどころか、“期限なし”となっていた。