物価高や半導体不足が原因で家電の価格が高騰している中で、新品より安価なリユース家電が注目を集めている。ではリユース工場ではどのような工程で、家電を復活させているのだろうか。
国内で最大規模のリユース工場を備えるヤマダデンキでは、中古に対するネガティブなイメージを払拭する徹底した“生産”管理がなされていた。
家電量販店最大手のヤマダホールディングスは、消費者から買い取った中古の生活家電を群馬県と滋賀県の自社工場で洗浄・点検し、リユース商品としてアウトレット・リユース店舗で販売している。物価上昇などを背景にリユース商品の売れ行きは好調で、同社は買い取り、供給をフル回転させている。
2022年5月、同社はグループ会社の「シー・アイ・シー」(高崎市)が群馬県藤岡市で運営するリユース工場に国内最大規模の新工場、ヤマダ東日本リユースセンター群馬工場を増設した。敷地4500坪の工場で従業員210人が働き、洗濯機、冷蔵庫を中心に生活家電を平日1日あたり約400~500台生産している。同工場を訪れ、中古品の入荷から再製品化、出荷までの工程に密着した。
午前8時半。全国各地から10トントラックが次々と到着し、荷台から使用済みの洗濯機や冷蔵庫が降ろされる。取材日は約500台が運び込まれた。
工場では約7000台を保管する巨大な自動倉庫や、3分間で洗濯機のドラム槽の汚れを落とす自動洗浄機などハイテク装置を駆使する一方、従業員が手作業で点検、分解、洗剤や温水での手洗い、組み立て、細部の補修、磨き上げなどを担当する。
ヤマダHD執行役員の清村浩一経営企画室長が説明する。
「洗濯機は製造から7年以内、冷蔵庫は8年以内などの条件を満たした製品を最低100円、最大5万円で買い取ります。リユース家電は新品の約3分の1の価格で販売、2年間の保証が付きます。店頭に並べると1週間で完売します」
中古家電に手間や運送コストをかけてまで再製品化しても採算を取れるのか。
「採算は十分に取れます。物流網があり、物量も確保できる弊社だからこそ成立する事業です」(同)
同工場の新設により2022年度のリユース家電の年間生産台数は18万6000台に上る。今年度は20万台、2025年度には30万台の生産を目指す。
リユース家電“生産”の流れ
【入庫】全国からトラックで運び込まれた製品を13桁の管理バーコードで登録し、自動化された倉庫棟に一時的に入庫する。
【1次点検】電源を入れて家庭で使う状態を再現し、スイッチ類や機能がすべて正常に作動するかなど一連の動作を点検する。
【洗浄】洗濯機を分解して内側の汚れを落とす。冷蔵庫には医療機関では消毒液として使われる次亜塩素酸水を使用する。
【2次点検】洗濯機は1次点検と同様、電源を入れ、給水・排水ホースをつなげて水を入れて一連の動作や機能をチェック。
【最終点検】付属品の確認。外側を磨き上げて光沢を出す。洗濯機には汎用ホースを付ける。梱包し、自動倉庫へ。
【出荷】リユース商品を扱う全国87店舗へ出荷する。
撮影/太田真三 取材・文/上田千春
※週刊ポスト2023年4月28日号