食料品価格の値上げが続く昨今、少しでも家計の負担を減らすべく「まとめ買い」「買い溜め」を心がけているという人も増えているが、そうした消費者の行動が白物家電の市場にも影響を与えているようだ。一般社団法人・日本電機工業会(JEMA)が3月15日に発表した「2023年度 電気機器の見通し」によると、2023年度の冷蔵庫の出荷額は4643億円と前年度の4527億円を上回る見込みで、特に「高付加価値品に買い替え需要がある」という。
実際、「高級家電でもある大型冷蔵庫が、ファミリー層に刺さっています。買い溜めした大量の食料品を入れられるだけでなく、防災用の備蓄などにも使えると、20万円前後~40万円超でもコンスタントに売れ、量販店の売り上げに貢献しています」(業界担当記者)との声もあり、大型冷蔵庫人気が高まっているようだ。
かつては大きなもので容量400リットル程度だったが、近年は、容量500リットル、600リットルを超える大型冷蔵庫が続々と発売されている。
一方で、大型冷蔵庫の購入者にとっては、戸惑うことも少なくないようだ。最近、大型冷蔵庫を購入したという男性・Aさん(30代)が打ち明ける。
「うちは4人家族で、子供も食べ盛りになってきて、作り置きもしたいので、それまでの約250リットルから約600リットルに買い替えました。今では、小型のファミリー向けマンションでの生活に、巨大な冷蔵庫がドドーンと出現し、異様な存在感を放っています。この光景にはまだ慣れませんね(苦笑)。
何より、ダイニングキッチンが狭くなり、備蓄品やキッチン家電を“圧縮陳列”しなければなくなったので、苦労しました。調味料などは冷蔵庫の側面にマグネット収納を取り付け、そこにゴチャゴチャと収容しています。以前は冷蔵庫の上部にもモノを置いていたのですが、妻の手が届かなくなったので、そこはデッドスペースになりました」
いまだに多い「玄関から入らない」「置けない」
500リットル超の冷蔵庫でも、幅や奥行は70cm前後になる。600リットルを超えると、それが80cmを超えることも珍しくない。初めて大型冷蔵庫に買い替えた人は、「冷蔵庫って、こんなに場所を取るの?」と驚くことも少なくない。家電量販店の店員は“ありがちなトラブル”についてこう語る。
「冷蔵庫を買ったけど『玄関から入らなかった』『置けなかった』というケースは、今でもよくあります。だからこそ、店頭の値札にも、ネット販売用メイン画像にも大きく『横幅』を記載してるのですが、やっぱりなくなりませんね……。
だいたい玄関の幅は70cm~80cm程度で、室内ドアはさらに狭い。以前、ファミリータイプのマンションに冷蔵庫を搬入する際、玄関すら通れず、改めて玄関ドアを外して運び入れるために、いったん引き返したケースもありました」