少し前までは、駅前や繁華街などで、道行く人にポケットティッシュを配る光景は、ありふれたものだった。それが、最近は街を歩いていても、そんな光景に出くわす機会はめっきり減った──。もともとティッシュ配りは日本独自のマーケティング手法で、販売促進を目的として、会社名や商品・サービス名が記載されたチラシ入りのティッシュが無料で配られていた。
統計データがあるわけではないが、ティッシュ配りが激減していることを実感している人は多いのではないか。その背景には、SNSの普及や代替販促商品の拡大、コロナ禍での衛生面への配慮など、さまざまな要因が指摘されているが、ティッシュを「もらえなくなった」人たちはどう感じているのだろうか? 様々な声を集めた。
今でも「自分で買うと負けた気がする」
メーカーに勤める40代男性・Aさんは、15年ほど前までは「ポケットティッシュ」を買ったことがなかったという。
「消費者金融やパチンコ店、居酒屋など、昔は街のあちこちでティッシュを配っていて、僕にとっては基本的に“タダ”で手に入れるものという認識でした。なんなら、いらない素振りを見せているのに、強引に押し付けられることもありましたね。銀行にも“ご自由にお持ち帰りください”とボックスに入れられていた記憶があります」(Aさん)
いつしかティッシュが配られなくなったが、だからといって自分で買うこともないという。Aさんが続ける。
「僕は花粉症でも鼻炎でもなく、鼻風邪も引くことがないので、基本的にティッシュペーパーは使わないんです。職場などで、何か拭くためにティッシュペーパーが必要になるシーンでは、たいていボックスティッシュが置いてありますし、必然性を感じない。あと、お金を出して買いたくない、という謎の意地みたいなものがあります(笑)。買うとなんだか負けた気がする」(Aさん)