特に重要なのは、夫の銀行口座が、どこにどれだけあるか把握しておくこと。名義人が亡くなったことを銀行に連絡すると、口座は凍結されてしまうからだ。
葬儀代など、当座で必要なお金を最大150万円まで引き出せる「預貯金の仮払い制度」はあるが、実は非常に使いづらいと明石さんは言う。
「預貯金の仮払い制度は、遺産分割協議の前しか使うことができません。しかも、引き出すためには亡くなった人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と、相続人全員の戸籍謄本が必要。夫が再婚だったり、養子だったりすると、戸籍謄本を揃えるのに時間がかかり“当面必要なお金をすぐに引き出せる”というメリットはほとんどなくなります」(明石さん・以下同)
銀行によっては、仮払い制度を使わなくても「葬儀代のためにどうしても必要」などと相談すれば、150万円ほど引き出せる場合もあるが、それも良しあしだ。
「名義人が亡くなった瞬間から、口座のお金はすべて相続財産です。つまり、葬儀代のために引き出して使ったお金も、後から遺産分割の際に加算しなければならなくなる。また、勝手に引き出すと、ほかの相続人に“何に使ったんだ”などと疑われ、もめごとの種になる可能性もある。
それよりも、亡くなる前から葬儀代や納骨費用としてある程度まとまったお金を引き出しておく方がいい。目安は100万~300万円ほどで、あらぬ疑いをかけられないよう、引き出すとしたら、数回に小分けにした方がいいでしょう」