元気なうちに「家族信託」の検討も
相続対策は、亡くなったときだけでなく、認知症になったときにも備えておくべきだ。もし、夫が認知症になったら、その時点で贈与してもらうことも、遺言書を書いてもらうこともできなくなる。そしてそれは「受け取る側」である、あなた自身にも当てはまる。
そこで、病気などで身動きが取れなくなったときに信頼できる家族などに財産を管理する権限を託しておく「家族信託」を、元気なうちに検討してみてほしい。
「女性の方が長生きしやすいため“相続人になる可能性”が高い一方“認知症になる可能性”も、男性よりも高いのです。もし妻が認知症になったら、夫の財産を相続するときに不利益が生じても、何も主張することができません。そこで例えば“夫が持っているアパートを管理する権利を子供に託し、家賃収入は妻(自分)に入るようにする”と、家族信託で指定しておくのです」(橘さん・以下同)
文字通り、家族を信じて託す契約なので、託された子供への報酬は発生しないケースが多いのもポイントだ。だが、注意点もある。
「家族信託で継承した家を相続後に売却する際、一定の要件で3000万円まで非課税になる『空き家特例』が使えなくなる恐れがあります」
また、家族信託をすると不動産登記されるため、登記簿謄本を見れば誰でも「この家には高齢者がいる」とわかってしまう。防犯上のリスクも考慮して、慎重に判断したい。
※女性セブン2023年5月11・18日号