「特別寄与料」は受け取れたとしても数十万~100万円
法定相続人ではない「嫁」は、義両親からは何も相続することはできない。だが2019年から、義両親の介護などをした場合は、相続財産の中から「特別寄与料」を受け取れるようになった。ところが、このハードルはかなり高いと、円満相続税理士法人代表の橘慶太さんは言う。
「義両親が入院していたり、施設に入っていると、寄与料は認められません。自宅で1年以上、ヘルパーなどもつけずに専業で介護をして初めて認められるのです」(橘さん)
仮に認められたとしても、金額の算出は難しく、受け取れたとしても、数十万~100万円ほど。寄与料を受け取るまでの労力に見合う金額かは疑問が残る。
「介護のためにかかったお金や、どれくらいの期間どんな介護をしたかなど、細かく記録しておく必要があります。領収書はすべて保管し、介護のためのお金を銀行から引き出すときの通帳の情報を、夫や夫のきょうだいなど、相続人と共有しておくことも大切です」(曽根さん)
そこまでしても、相続人に拒否されれば、もらうことはできない。税理士の板倉京さんも、厳しい見方をする。
「そもそもこれは“嫁は義両親の介護をするものだ”という前時代的な前提に立っており、その時点で嫁・妻からすると“不愉快な法律”です。しかも、特別寄与料は義務化されたのではなく“もらうことができる”というだけ」
どうしても受け取りたいなら、介護を引き受ける前に「私はタダ働きはしません」と、ハッキリ意思表明をした方がいいだろう。もっとも確実なのは、面倒を見た義両親に遺言書を書いてもらうか、生前贈与してもらうことだ。
「義両親の介護と引き換えに贈与を受ける『負担付贈与』の契約なら、義両親も安心できるかもしれません。ただしその場合も、相続人とのもめごとを避けるため、介護の記録は必ず残すようにしてください」(明石さん)
※女性セブン2023年5月11・18日号