親から引き継いだ家が、自分が生まれ育った場所が“負の遺産”になってしまうのはあまりにも悲しいが、10年後には全国の家屋のうち3軒に1軒が空き家になるといわれている。今年3月、利用されていない空き家や別荘に課税する「空き家税」の導入が京都市で決定し、2026年をめどに施行される予定。全国の自治体に広がっていく可能性が指摘されている。「相続した家のせいで損をする」という事態に陥らないためにはどうすればいいのか。
「まず心に留めておくべきことは、家を“資産”ととらえると失敗するということです」
と語るのは、空き家問題に詳しいジャーナリストの佐々木俊尚さん。つまりいかに早く、効率的に手放せるかどうかが明暗を分ける。そのとき、真っ先に挙げられる選択肢は「売却」だ。
税理士の板倉京さんは「売るならばとにかく早く準備すべし」とアドバイスする。
「誰も住む予定のない家を相続して最初に行うべきは、不動産登記の名義変更を行う『相続登記』です。手続きが煩雑なため、現状は相続登記されていない不動産が少なくありませんが、来年4月からは義務化され、相続して3年以内に行わなかった場合、10万円の罰金が科せられることになりました。
相続後に登記を確認したら、知らない先祖の名前になっていることもしばしばです。もし登記名が祖父になっていたら、家を売るには祖父の相続人全員の許可が必要になる。相続が予想される不動産はいまから登記を確認しておくとスムーズです」(板倉さん)
名義変更後は、売却のための準備にとりかかろう。
「相続してから3年以内は一定の要件を満たせば『空き家特例』が使えます。本来、不動産を売却して得た利益には20%の税金がかかりますが、この特例の運用を受けて売却すれば、その利益から最大で3000万円が控除されます」(板倉さん)
条件は新耐震基準が施行された1981年5月31日以前に建築された家であることや、土地と建物を一緒に相続していることなどいくつかあるが、クリアできれば節税効果は抜群。当初は今年12月31日までの予定だったが、2027年12月31日まで期間が延長されるため、まだまだ使えるチャンスがある。