そもそもPBRとは?
株式投資をする上で、今の株価が割安かどうかを判断することはとても重要です。といっても、株価は100円だから安く、1万円だから高いというものではなく、企業の本来の価値に対して、今の株価が割安かどうかを考えなくてはなりません。そこでヒントとなるのが、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった株価指標です。
ざっくり解説すると、PERは、企業の稼ぎ力にたいして株価が割安かどうかを測る指標、PBRはその企業がもっている資産に対して株価が割安かどうかを測る指標です。今までは、わりとPERが重視されてきましたが、ここにきてがぜんPBRにスポットライトが当たっています。
PBRは、〈株価÷一株純資産〉で計算されます。つまり、「現状、一株純資産の何倍の株価がついているか?」とも言い換えられます。一株純資産というのは、純資産を発行株数で割ったものです。
純資産が100万円で、発行株数が100株だとしたら、一株純資産は1万円になります。仮にこの企業が、解散となった場合、株主は、一株につき1万円もらえることになります。そのため、一株純資産を“解散価値”ともいいます。
株価が1万円で一株純資産が1万円であれば、PBRは1倍です。ではもし、株価が9000円だったら、9000円÷1万円=0.9倍。つまり“PBR1倍割れ”となってしまいます。これは9000円で株を買って、そのあと企業が解散したら1万円もらえるということなので、「割安」と判断することができます。もちろんこれは理論的な話ですので、実際はそんなに単純なものではないのですが、それにしてもPBRが1倍割れている企業は、市場からの評価がいちじるしく低いと言えます。
なぜ東証は1倍割れ企業に改善要請するのか?
東証は3月31日に、PBR1倍を下回る企業に、株価水準を引き上げるための具体策を開示・実行するようあらためて要請しました。PBR1倍割れは「成長性が投資者(株主)から十分に評価されていないことが示唆される1つの目安」と問題視したためです。取引所が企業に意識改革を求めるのは世界でも非常に珍しく、それゆえ海外投資家からも注目されています。
じつはPBRが1倍未満の企業は、プライム市場、スタンダード市場をあわせて約1800社と全体の5割強を占めています。意外に感じるかもしれませんが、トヨタ自動車や三菱UFJ、JR東海など大手優良企業とされるところでも1倍割れしています。
東証はプライム市場に上場する1倍割れ銘柄が1倍に是正された場合、同市場の時価総額は現在の約700兆円から約850兆円に増えると試算しています。もし実現できれば、アメリカ株に比べ魅力が乏しいと言われ続けている日本株が、海外投資家からも見直される大きなチャンスとなりそうです。
PBR1倍割れを解消するには?
具体的にPBR1倍割れを解消するためには、「株価を上げる」か「一株純資産を小さくする」かのいずれかを行わなくてはいけません。
とはいえ、企業が株価を上げるのは、一筋縄ではいきません。収益力を上げ、投資家からの評価をあげるという地道な努力が必要だからです。
とりあえず手っ取り早いのは、一株純資産を小さくすることです。これは、自社株を買えばすぐさま実行できる荒技で、実際にここのところ自社株買いをする企業が続出しています。自社株買いは、市場に出回る株数が減少することもあり需給が引き締まります。そのため短期的な株価上昇要因にもなります。
このようにPBR1倍割れを是正するために、自社株買いを含めたなんらかの行動を起こす企業が増えており、それが株価上昇につながるため、投資家はPBR1倍割れ銘柄を血眼になって物色している現状があるわけです。
PBR1倍割れ銘柄投資の注意点
PBR1倍割れている企業ならなんでもよいかというと、当然そんなわけではありません。そもそも株価が安いということは、その企業自体に魅力がなく、安くて当たり前の状態の可能性もあります。つまり”安かろう悪かろう”です。であれば、いくら自社株買いをしたとて持続力はなく、根本的な解決とはなりません。