マサルさんは「女性とのコミュニケーション練習代」と自らに言い訳をしながら、月2~3万円ほど地下アイドルのライブに費やす。しかし、そういった推し活の費用がかさむ一方で、肝心の婚活は難航している。最近、会社から家に帰ったとき、ある思いが脳裏をよぎった。
「最近、彼氏がいることを告白したり、引退するというVTuberが相次ぐのを見ていて、ふと我に返ったというか……。正直、僕にとって推し活は、現実逃避でした。もちろん、癒やしをもらえるという前向きなメリットもありますが、お金を払わなければ、女性に相手にされない現実を直視できなかったのかもしれません。お酒を飲みながらVTuberの配信を見て泣くこともありました。推し活に月々10万円かけるなら、資産を増やすほうに使ったり、自分磨きするとか、何らかできたような気がします。今はとりあえず、貯金を頑張ろうと思っています」
定年後、娘と同じくらいの年頃の配信者に入れあげる
既婚者でも不安にさいなまれ、推し活の落とし穴にハマってしまった人もいる。商社に勤めていた60代男性・ケンイチさん(仮名)は、定年退職後にこれといった趣味もなく、家でゴロゴロする日々を過ごしていた。
ケンイチさんが家にいると、妻から『たまには家事を手伝って』『何か新しいことを始めたら』と口うるさく言われるようになった。そんな妻を疎ましく思っていたところ、会社員時代の同僚や後輩に飲みに誘われたそうだ。そこで「ライブ配信」に出合った。
「会社以外の居場所や交流関係がなく、この先どう生きていけばいいのか、わからなくなっていました。そんなときに出会ったのが、次女と同じくらいの年頃の配信者でした。学費を自分で払っているとのことで、配信しているのは正直雑談でしかないのですが、“あしながおじさん”の気持ちで投げ銭したり、Amazonのほしいものリストに記載された商品を買ってあげていました。
投げ銭をすると、自分の名前を声に出して呼んでくれたり、ランキングでも上位にいく。自分が必要とされている感じがして、生きる希望が湧きました」(ケンイチさん、以下「」内同)