10のNG項目は別掲のリストの通り。木下氏はこう続ける。
「条件に合う土地は限られるし、適合させようとすると費用が発生します。仮に建物を解体・撤去するなら100万円以上かかるでしょうし、山林で境界線を画定するのに測量などで数百万円かかるケースもあります。また、法務局への申請では一筆あたり1万4000円の調査手数料がかかり、却下・不承認となっても返還されません」
厄介な「別荘」を処分
さらに承認された後も、「管理に必要な費用の10年分」の負担金が発生する。原則20万円と説明されているが、ケースバイケースの部分も大きい。
「雑種地や原野は面積にかかわらず20万円ですが、宅地、農地、山林は区域によって変わります。同じ宅地でも家があまりない都市計画法上の指定区域外だと一律20万円ですが、市街化区域などは面積に応じて負担金が決まる。法務省が公表する算定式に基づけば、市街化区域に指定された宅地300平方メートルなら101万8000円、農用地区域内の田畑2000平方メートルなら186万8000円、1万平方メートルの山林なら36万7000円といった負担金額になる計算です」(木下氏)
それだけの額を払ってまで国に引き取ってもらうのか、という判断が必要になってくる。前出・吉澤氏はこう言う。
「大前提として、相続した土地に買い手がつくなら売ったほうがいいわけです。建物を壊す費用がかかっても、その後の土地が誰かに売れるなら、わざわざ国に手数料や負担金を払って引き取ってもらう必要はない。つまり、売れない土地こそ国に引き取ってもらいたいわけですが、そういう土地は管理・処分が難しいことが多く、国の厳しい条件ではじかれる可能性が高そうです」
そうした諸事情を踏まえ、新制度を活用できるのはどのようなケースか。
「たとえば、“親から相続したけど使わない別荘”などは検討に値するでしょう。別荘の場合、管理費や固定資産税が年数十万円に及ぶこともあるし、親の購入時と需要が大きく変化して売ろうにも売れないことが多い。建物を壊すコストをかけてでも、国に引き取ってもらえるか検討していいのではないか」(木下氏)