子供たちが東京近郊に住んでいて、離れた田舎で亡くなった親が境界の画定した平地の田畑を持つケースも想定される。
「そうした田畑が売れないことはないものの二束三文の価値だとすると、仲介業者もわざわざ扱ってくれないことが多い。仮に扱う業者がいても打ち合わせで何度も東京と往復して経費がかかるといった場合は、国に引き取ってもらう選択肢もあると思います。不動産取引は信頼できる相手かどうかが重要ですが、国であれば安心というメリットはあります」(吉澤氏)
「国より業者」の選択は?
国の条件が厳しいため、「新制度の利用が難しそうだと判断し、不要な土地を引き取る業者に相談する人も増えている」(木下氏)という現状もある。
不要不動産の引き取り事業を展開するLandIssuesの松尾企晴社長はこう言う。
「弊社では崩壊しているようなものを除き、基本的には建物がある土地も引き取ります。引き取り費用は一筆あたり15万円で、隣接地なら二筆目以降は5万円です。報道などで国の新制度を知ったものの、審査の厳しさや高額な費用がかかることから、相談にいらっしゃる方が増えています」
前出・木下氏が言う。
「新制度ができたことをきっかけに、所有不動産の一覧を親子で共有し、相続後に必要なのか、売却できそうなのか、といったことをまずは話し合うべきでしょう」
家族で一緒に「不動産の相続」と向き合うことが何より重要だ。
※週刊ポスト2023年5月19日号