いま飲食店が、人手不足にあえいでいる。4月末には、牛丼チェーン・吉野家の都心の店舗で「人員不足の為休業します」という貼り紙が出ていたこともSNSで話題を集めた。
帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」によると、正社員では51.4%、非正社員では30.7%の企業が人手不足と回答。非正社員の業種別では「飲食店」が85.2%と10業種のうち唯一8割を超え、就業者数がコロナ前の水準に戻っていない状態が続いている。アルバイトを募集してもなかなか人が集まらない飲食店も多いようだが、一方で飲食店のアルバイト経験者のなかには、「たとえ時給が高くても、大変だからもうやりたくない」という声もある。そんな経験者たちの声から、飲食店アルバイトの実情を探った。
繁忙期には“強制シフト”で15連勤を組まれたことも
20代男性・Aさん(メーカー勤務)は、大学4年生だった2019年から2020年にかけて、外食チェーン店でアルバイトをしていた。当時の大変さをこう振り返る。
「まかないも食べられるし、出会いもありそうだし、いいかな~、なんていう安直な考えでやっていましたが、繁忙期には、人手が足りないという理由で“強制シフト”で15連勤を組まれたことがありました。テスト期間はできるだけ休みたかったのに、配慮もない。アルバイトなのに、戦力として期待されすぎてしまって、体調が悪いと言ったら、陰で店員に『あいつはすぐ休む』『所詮アルバイトだもんな』などと愚痴を言われていました。
しかもコロナが始まると、こまめなアルコール除菌やアクリル板の設置、清掃、テイクアウトの開始など、めちゃくちゃ仕事が増えたのに、時給は変わらなかった。大学卒業というタイミングでバイトも辞めましたが、今思えばとにかく大変だったという記憶しかないです。後輩で飲食店バイトに興味をもっているヤツがいましたが、『将来飲食店で働きたいならいいけど、大変だよ……』と伝えました。
ただ、ブランド力のあるカフェチェーンなどは、今も競争率がすごいという話は耳にします。アルバイトも“売り手市場”ということでしょうか」(Aさん)