ジャンルによっては恋人同士でも一緒に行かない
「ジャンルによっては一人で見たい映画もある」という人もいる。メーカーに勤務する20代女性・Bさんは、友人や恋人と映画を見に行くのも好きだが、ドキュメンタリーや感動作は、一人で鑑賞したい派だ。
「好みが違うなら無理して相手に合わせる必要はないと思います。彼はアニメ好きですが、私はあまり興味がないので、彼は一人で何本も見に行っていますよ。私も集中して見たいものは一人で行きたいし、ボロ泣きしてるところを相手に見られたくないというのもあります」(Bさん)
何より映画に集中することを優先したいBさんにとって、厄介なのは上映中にコミュニケーションを取ろうとしてくる人だという。
「以前、上映中に『ポップコーン食べる?』『チュロスいる?』と食べ物をこちらに向けてくる人がいました。私は映画を見るときは、買っても飲み物だけなので、良かれと思って聞いてくれるんでしょうけど、正直煩わしいです。映画のストーリーについても、『絶対この人、○○が好きだよね?』『犯人ってこの人じゃない?』とささやく人もいます。話しながら見たいなら、家でDVDや配信を見ようよ、って思います」(Bさん)
一緒に行くなら価値観が合う人
「社会人になって、映画館に行くことの意味が変わった」という人もいる。出版関連企業に勤務する30代男性・Cさんがいう。
「かつては映画館は人と予定や見たい映画を合わせて行く場所で、それこそ学生時代は、友人や恋人と同じ時間と感動を共有する場でした。でも、いまは仕事帰りにふらっと一人で立ち寄る、癒しの場という感覚です」(Cさん)
今は映画は「基本的には一人で見たい」というCさんだが、一緒に行ってもいい相手もいる。
「その映画のオタク同士、または価値観が合う人ならいいですよね。『このシーン最高だったよな』って興奮と感動を分かち合えたら、それはすごく楽しいと思います。ただ、別に議論をしたいわけじゃないんです。単純に、同じ思いだったよねという確認がしたいだけなので、完全に『この人となら趣味が合う』とわかっている人となら一緒に行きたい。そうでなければ、映画を見た後に、一人でSNSやレビューを見て、いろんな人の感想を摂取するので充分です」(Cさん)
“一人映画”ならではのメリットを感じる人も少なくない様子。映画館を利用する人の価値観も多様化しているようだ。(了)