家計

「足りなければ働いて稼げばいい」はずが… 貯金ゼロを続けた60代女性記者を襲った「大病」の試練

病気になって音を立てて崩れた自信

「65才で、介護してきた実母を見送った後、体に異変が生じたの。病院に行ったら、卵巣がんの疑いがあるって……。体を壊して初めて、“いざとなれば働いて稼げばいい”という自信が、音を立てて崩れたの。それは健康な体があることが大前提だったんだと気づかされたわけ」

 入院してまず心配したのが、医療費だった。貯金がないのに、手術代、入院費用をどうするか──。

「病院に問い合わせたら、70万円はかかると言われたの。もう首をくくるしかないかと真っ青になっていたら、区役所から高額療養費制度【※】をすすめられてすぐに手続きをした。そしたら、12日間入院して手術もしたのに、低所得者のため自己負担額は総額11万8000円で済んだの」

【※医療費の家計負担を減らすため、医療機関や薬局の窓口で支払った医療費が1か月(1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた金額を支給する制度】

「生活と格闘してばかりいたわけではない」

 退院後、「死んだら葬式代をどうしよう」という悩みを解消するため、月2万8325円を積み立てることで満期には500万円が入るという貯蓄型生命保険に入った。さらに、体に負担のない働き方も考えた。

「夢は自分の本を持って講演会をしつつ、全国を放浪して読者に直接手渡しで売ることね。そのためにコツコツ書きためています」

 ほかにもやりたい仕事はたくさんあると楽しそうに笑う。

「いまは母の介護の“お駄賃”が少し入ったから、66才にして初めて来月と再来月の生活費が通帳に残っている状態。これまでは来月の生活費があったら、海外へ電車を乗りに行ったり最安値でオペラ鑑賞したりして使っていたの。生活と格闘してばかりいたわけではないのよ」

 貯金は確かなものではない。何があっても働いて稼ぎ、そのお金で遊ぶという思いと行動力があるから、貯金ゼロでもやっていけるのだ。

【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子さん/空中ブランコや富士登山など体当たり取材でおなじみ。本誌『女性セブン』連載『いつも心にさざ波を!』も好評。共著に『で、やせたの?~まんがでもわかる人生ダイエット図鑑~』(小学館)。

取材・文/桜田容子

※女性セブン2023年5月25日号

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